「菅・小沢」戦争に加え「菅・岡田」の綱引き

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「菅・小沢」戦争に加え「菅・岡田」の綱引き

民主党の新幹事長に岡田前外相の起用が決まった。

菅首相は当初から岡田氏に的を絞り、周到に根回しして口説き落としたという。岡田氏は外相留任に強い意欲を示した。原理主義者で戦略的思考に欠ける、外務省のお膳立てに乗る安全運転型、普天間問題の迷走の責任も大きいといった辛口評もあるが、外交密約の調査や核軍縮に取り組んで実績を残した。民主党政権の初代外相としては合格点だったといっていい。

なのに、菅首相はあえて幹事長に回した。

代表選の同志で、「クリーンでオープンな政治」の旗手として評価が高い。2002~04年の菅代表時代、岡田幹事長とコンビを組み、03年の民由合流、直後の総選挙勝利を実現した。気心も手腕・力量も承知で、安定感もある。そこを買ったのだろう。

だが、この場面での幹事長は「損な役回り」という面がある。幹事長は選挙対策、党運営、国会対策が主要な仕事だが、選挙では出番は乏しい。首相が解散を断行しない限り、2013年まで衆参の選挙はないからだ。

一方、党運営では巨大な反主流派の存在という厳しい党内対立、国会対策では衆参ねじれと、高い壁が立ちはだかる。旨みが少ない幹事長で、「火中の栗」を拾う役目だ。「貧乏くじ」を引かされたと見ることもできる。

岡田氏を「2人といない右腕」と見て菅首相が党を託した形だが、一方で「損な役回り」を承知で「貧乏くじ」を引かせて「火中の栗」を拾わせようと策した可能性もある。

政界には「ナンバーツーの潰し方を考えない権力者は失格」という格言がある。就任直後の参院選、代表選という二つのハードルをなんとか乗り切り、「長期・本格政権」を意識し始めた菅首相が、ライバルを押さえ込まなければ、と計算を働かせたとしても不思議ではない。

小沢氏を制した後は岡田氏の押さえ込み、と考えて一計を案じたのかもしれない。

だが、岡田幹事長は「貧乏くじ」を逆手にとって、「火中の栗」を拾いながら、ここで政治家として大きく成長を遂げれば、反対に「損な役回り」を飛躍のステップにすることができる。これからは「菅・小沢」戦争に加えて「菅・岡田」の綱引きも要注意事項だ。
(撮影:高橋孫一郎)


塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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