代表選は大政争劇の第一幕

代表選は大政争劇の第一幕

塩田潮

 代表選まで残り1日となった。

 菅首相優勢の報道が多いが、「選挙の小沢」が予想を覆す可能性もある。今回は異例の長丁場で、論争にも熱が入った。菅首相は「雇用」を叫び、小沢氏は「無駄削除、予算組み替え」を訴えたが、実は激突ポイントはそこではない。雇用も、無駄削除や予算組み替えも、取り組み方や優先順位などに差はあっても両者とも施策の必要性を認めている問題だ。決戦まで突き進んだのは、ともに強い権力欲の持ち主という点を別にすれば、ここへきて決定的となった相手への不信と反感ではなかったか。

 雑草のように政界を生き抜き、自身の腕一本で政権に到達したと考えている菅首相は「自分流の政権」に強いこだわりがある。就任時、「影の実力者」の小沢氏に「しばらく静かに」と言い放ったが、在任中は「休眠実力者」で、できればパワーダウンで実力者脱落に、というのが願いだろう。本心では「ずっと静かに」と言いたかったのでないか。自民党的体質を残す小沢氏は、政権獲得の特効的としては必要だったが、ここまでくればご用済みという意識が底流にある。

 一方、3年余の代表時代に政権獲得のレールを用意したと自負する小沢氏は、民主党を政権政党に育て上げたのは自分で、政権獲得後の民主党政治の実現でも主動的役割を担うつもりだった。ところが、菅首相が「脱小沢」を唱え、平然と路線変更に踏み出したのを見て、自身の努力と実績を全否定したと受け止めたようだ。

 両者は2003年の民由合流のときから手を取り合い、小沢代表時代以降は「トロイカ体制」を担ってきたが、実際は同床異夢だった。二人は現段階では「代表選が終われば協力し合って」と語っている。だが、描く将来像や政治スタイルだけでなく、政治文化や体質など、違いが明白となった以上、関係修復は不可能かもしれない。

 であれば、負けたほうは離党・分党に走るのか。政権政党である限り、権力が接着剤となり、分裂回避のベクトルが働く。だが、激突の構図は消えない。代表選は大政争劇の第一幕と見るべきだろう。

塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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