安河内:そのとおりです。子どもも大人も縛りがなければ2技能の試験に逃げます。日本人がたとえば苦手なスピーキングがありませんから。だからTOEICの受験者が多いんですね。まったく英語が話せなくても高得点がとれちゃう。できることなら、2技能で済ませたいというのが多くの日本人の本音でしょう。
ですが、昨年春の「大学受験にTOEFL導入」というニュースから始まって、いろいろな議論はありましたが、入試英語4技能化が一気に現実的になりました。「このままひるまずに突っ走ってください!」と、今日は遠藤先生に直接言いたかったのです。
遠藤:言い出した責任もあるし、最後までやっていくつもりです。
安河内:微力ながら全力で応援させてもらいます。
グローバル社会で求められる日本の教育政策とは?
安河内:最後にグローバル化が進む中で、英語に限らず日本の教育全体がどんなふうになっていけばいいとお考えか、先生の夢を聞かせていただけますか?
遠藤:日本は地下資源がない国でしたが、戦後に経済大国になれたのは、平均してレベルの高い人材を輩出できた教育があったからです。最近は中国、韓国に追いつき追い越せと言われ、ちょっと勢いがなくなっている感もありますが、いまだに世界最高水準であることは変わりません。
ただ70年近く同じ仕組みでやってきた弊害も出てきていると思います。個々人の能力はみんな違うし、適性もさまざま。成長スピードだって違う。誰もが同じスピードで進むのは無理な話です。私の世代は年間270万人が生まれていましたが、今は100万人であることも考えると、一人ひとりの潜在能力にもっと寄り添った形の教育に変えていく必要があるように思います。
でないと、日本の人材が低迷してしまう。能力や適性、成長スピードに合わせて、複線化、多様化を施した授業をしていかなければならない。バスに乗ったら最後まで同じ目的地に向かうのではなくて、途中で別のバスに乗り換えたり、列車や車に乗り換えたりしてもいいというようなね。
そんな教育を用意することで、最終的には世界で活躍できる日本人を育てていく。今の日本の教育でいちばん大事なことだと感じています。
世界を回って思うのは、日本人は前の世代が頑張ってくれたおかげで豊かな国になり、恵まれすぎて安心してしまっている部分があるかなということ。結果的に冒険しないで、内向き志向になっている気がします。
でも資源もない国なので、チャレンジしてかないと、今の生活どころか、それ以下の水準の生活も維持できなくなってしまう。社会で強くたくましく生きていける人間を育てるのは、今までの仕組みに安住しないこと。批判を恐れずに、個人の能力をもっと生かせる制度、仕組み、待遇に変えていかなければと、現在、さまざまな取り組みをしている最中です。
安河内:ありがとうございます。先生の夢を応援させていただきたいと思います。英語教育に関しては、小間使いのように私を使ってください(笑)。有識者会議が終わった後も、日本の英語教育改革のために走り回るつもりですので! 今後もさまざまな方からの反対の声が届いたりもすると思いますが、最後まで頑張ってください。よろしくお願いします!
遠藤:わかりました。
(構成:山本 航、撮影:上田真緒)
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