学校教師たちの“SOS”を受け止めろ! その教育現場に夢はあるか

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管理の厳しい職場を嫌い、故郷に帰って人生を再スタートする。管理職が自ら降格を申し出る。仕事の忙しさやクレーム対応に疲れ切り、心身を病む――。

これらはいずれも昨今、世間を賑わせているいわゆるブラック企業でのことではない。小学校や中学校という公教育現場で先生(教師)に起こっている話だ。

日本の教師は「働かされすぎ」?

OECD(経済協力開発機構)が2013年に実施した国際教員指導環境調査(通称「TALIS」)によると、日本の教師は1週間で53.9時間働いている。参加国平均は同38.3時間。たとえば韓国は同37時間、スウェーデン42.4時間と、日本の教師の労働時間は突出して長い。

何より気になるのは、仕事の充実感の低さだ。「全体としてみれば、この仕事に満足している」と答えた教師は全体の85.1%だが、参加国平均の91.2%よりも低い。「もう一度仕事を選べるとしたら、また教員になりたい」と答えた教師は58.1%にすぎない。仕事に誇りを抱けず、忙しさだけが募っている。

最近の教師は教育委員会への報告や研修、会議などの雑務が急速に増えている。「子どもに向き合ったり、教材研究をしたりする時間がとれない」。モンスター・ペアレンツと呼ばれる、常軌を逸した保護者らのクレーム対応も重荷になっている。

構造的な問題も進行している。一つは教師のいびつな年齢構成だ。戦後、教師の大量採用期と厳しく絞った時期がそれぞれあるため、人員が多いのは50歳以上のベテラン。半面、30~40歳代の中堅教師は層が薄い。一方で、今後10年間で20万人規模が見込まれるベテランの大量退職に対応するため、若手教師が大量に採用されている。これにより中堅教師に負荷がかかりやすい構造が生まれている。

次ページもう一つの構造問題とは?
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