PB(プライベートブランド)高級化の試練、競争は第2ステージに突入

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NBを超えるPBにメーカーは冷ややか

流通企業は、自前の研究所や工場を持っていない。このためPBのプレミアム化にはメーカーの協力が不可欠となる。すでにPB比率が4割に達した英国では、流通主要4社のシェアは7割超。圧倒的なバイイングパワーを武器に、食品メーカーに高付加価値品をPBとして提供させ、顧客層の拡大に成功している。

一方で、日本の主要4社のシェアはわずか1割程度。メーカーがあえてPBに高付加価値の商品を提供するメリットは少ない。昨年からPBへの消極姿勢を一変させて、セブン&アイへPBの提供を始めた山崎製パンも、「商品開発のノウハウがない流通ではなく、技術開発を進めるNBが先を行く。これ以上、PB比率は増えないだろう」(飯島延浩社長)と、自信たっぷりだ。

それでもプレミアム化の流れは、中小の食品メーカーにとって脅威になりかねない。これまで激安PBの製造の受け皿となってきたが、流通大手はPB市場拡大に伴い、生産能力が高いトップメーカーへの委託を増やしている。そこへ品質向上が条件に加わると、研究開発費に乏しい中小メーカーは不利となる。

流通はPBを生産する見返りとして、商品棚を優先的に割り当てることを通例としており、中小メーカーはNBの納入も難しくなる。ある中堅パンメーカーは、山崎製パンのPB参入で棚の占有率が減少。NBの特売品を増やして何とか商品棚を確保している状況だ。「特売品の比率が増えて、工場はフル稼働なのに利益は減る一方だ」と同社の工場長は悲鳴を上げる。

PB市場を分析する富士経済の日下部史圭研究員は、「今の状況が続けば中小メーカーの淘汰が起きて業界再編につながりかねない」と指摘する。業界のパワーバランスを崩しかねないプレミアム化の成否はいかに。第2ステージの火蓋は切られたばかりだ。

(麻田真衣、鈴木良英 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年9月4日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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