当たり前のように聞こえるが、結局一流の選手とは、「周りの誰よりも成果を出せるようなそんな努力を積み重ねている人」のことをいう。涙を流してもらうまではなかなか難しいが、その努力の様子を、良くも悪くも、戻ろうとした際に、周囲は覚えているものだということだろう。
問われる「受け入れる側」の懐の深さ
一方で、実は「受け入れる組織の懐の深さ」も問われている。一度、卒業した者を、再度「仲間」として快く受け入れるか、「裏切り者」として扱うか、最近はビジネス界でも二極化する傾向にある。
しかし、どちらの組織が活性化しているか?で見ると、往々にして一度、離れた者を快く受け入れる多様性のある組織の方が強い。似たもの同士が集まるような単一組織は順調な時は良い。だが、ひとたび環境変化が起こると、似た者同士が集まっているため生き残りが難しいのだ。
余談だが、2012年の香川の放出時に、移籍金としてドルトムントが手にしたのは、1,600万ユーロ、今回の加入時に支払ったのは、800万ユーロだから、単純計算はできないものの、収益としても差引800万ユーロ(約11億円)を得たことになる。多様性の尊重が、結果としての利益をもたらしたともいえるわけだ。しかも、この2012年の移籍金も元手にスタジアムを改修、その後の収益増加を実現したというから、実際はそれ以上だ。
ここまで書いてきたわけだが、筆者は、特に転職や無茶な異動を勧めているわけではない。ただ、世の中には、「水を得た魚」と言う言葉がある。どれほど、速く泳げる魚でも水が足りないと、能力は発揮できない。ビジネスもサッカーも同様だと思うのだ。
環境が人を変える。そのためには、自分で環境を選び、創り出すよりない。プライドにこだわらず、守らずにチャレンジし続けること、誰からも惜しまれるくらい1つ1つの仕事において他に負けない成果を出し続けること、そんなごく当たり前に聞こえることをどこまで徹底できるかが大切だ。「香川真司とドルトムントの熱狂」は、そんなことを私たちに教えてくれているのかもしれない。
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