カレンダー上の特定の日付になった途端に人の世が急激に変わり、何もかもがうまくいくなんて、もちろん誰も信じていない。とはいえ、新年が近づくにつれて、妙な期待に胸を膨らませてしまうもの。計画を練ったり、目標を立てたり、ダイエットを決心したり、こうした妄想に取り憑かれること自体が一種の通過儀礼だとさえ言える。
結果的に、その1つひとつの心構えが絵に描いた餅で終わることは非常に多いが、少なくとも年末年始の間だけは、「今度こそ!」と気合を入れたくなるのだ。
私はといえば、自らの三日坊主気質をとうの昔から受け入れているので、この時期になっても背伸びせず、身の丈に合った形で休日を楽しむことにしている。つまり布団にくるまって心ゆくまで本を読むわけだが、自分にとって、それは待ちに待った至福のひとときである。
貴族レディースのお正月はどんなだったのか
そこで、読んでいる本から一瞬顔を上げると、ある思いがふと頭をかすめる。日本の伝統をぐーっと平安時代までさかのぼって、みんなはお正月をどう過ごしていたのだろうか、と。多くの傑作を書き残してくれた貴族のレディースたちも、私たちと同じように新しい年に夢を託していたのだろうか……。
軽く目を閉じて、宮中の様子を想像してみる。正装した殿上人はみんな朝早くから四方拝に出席。センスを競いながら生きていた平安人は、老若男女着飾ってお祝いをしていたのだろう、とその鮮やかな風景が目に浮かぶ。
赤や紫の柔らかい絹をふんだんに身にまとい、葡萄染めの上着を羽織る素敵な姫君たち。色とりどりの練り模様の裳。動くと裏地の色がちらりとのぞき、山吹色、萌黄色など、組み合わせはどれもおしゃれだ。
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