今年のバレンタインもあっという間に過ぎ去ったが、瞬時にムードを切り替えられる日本人はさすがだと思う今日この頃。あんな大量にあったチョコレートはどこに消えたのか、その消息が気になる。
イタリアの恋人たちといえば恋の祭典とは関係なく、年中道端でいちゃついたり、カードやスイーツを交換したりする。その中で定番になっているのは、ロマンチックな工夫を凝らしたチョコレート。それはショコラティエが手がけている豪華なものではなく、イタリアの空港や駅で必ずと言っていいほど見かけるお手頃なお菓子だ。
銀色の包み紙に青い星の模様が施されて、味は特別なわけでもないが、人気の秘訣は同封されている「愛の言葉」。包み紙を開けると、別の薄い紙が中に入っており、カーロ、ボードレール、フィッツジェラルド……愛を語り、愛に命を捧げたアーティストたちの、心に染みる格言が小さく印刷されている。恋人たちは見つめ合ってその言葉を読み、ビビッと運命を感じるわけである。安物でありながらも、提供してくれる勘違いはプライスレス。
甘い言葉は信じてはダメ!と訴え続けた日本女性
そうはいっても……。フリーダ・カーロは画家としてすばらしい功績をあげたが、男選びはどうだろうか。巨大なディエゴ・リベラと小柄なカーロはよく象と鳩に例えられ、何もかもミスマッチだった。希代アーティストとして名をはせた2人の結婚生活は浮気と家庭内暴力の繰り返し、ニュースになるほどの騒動を何度も起こしている。
シャルル・ボードレールはジャンヌ・デュバルという謎の女にほれ込み、彼女の奔放な性格と度重なる浮気のせいで発狂寸前だった。そのミューズの影が色濃く映し出されているのは、代表作の『悪の華』…。タイトルからして、穏やかな関係ではなかったことが一目瞭然。
スコット・フィッツジェラルドとゼルダ・セイヤーの結婚生活もまた破滅そのものだった。片方はアル中、片方は重症な情緒不安定に陥り、『楽園のこちら側』というより、まさに生き地獄のよう。ロダン、ランボー、ヴェルレーヌ……名言こそ素敵だが、みじめな恋愛から抜け出せなかった偉人のリストはいつまでも続く。だまされてはいけない、やはり恋はキケン……。
しかし、その残酷な事実をいち早く察知して、甘い言葉を信じてはダメと訴え続けた日本の女性がいる。いうまでもなく、それはおなじみの藤原道綱母(この連載では、通称「みっちゃん」)である。
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