意外とわびしかった「紫式部」「和泉式部」のお正月 古典からわかる貴族レディース「悲喜こもごも」

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正月一日はまいて空のけしきもうらうらとめづらしう、かすみこめたるに、世にありとある人はみな姿かたちことにつくろひ、君をもわれをも祝ひなどしたるさまことにをかし。
【イザ流圧倒的訳】
正月一日は空も一層うららかに新鮮な感じで、たちこめる霞まで清らかに感じる。ありとあらゆる人はいつもよりきれいに着飾り、相手のことも自分のこともお祝いなどする。そういう雰囲気は本当に好きだ!

こちらは清少納言が簡潔にまとめたお正月の描写だ。

「めずらし」は「清新、新鮮」というような意味合いを持っている形容詞だが、1月1日のうららかな様子が、清少納言本人の心持を反映しているものでもある。

作者の目が透き通った空から、着飾っている人々へと素早く移り、最後は心のなかへと静かに降りてくる。とても短い文章の割に、躍動感に溢れており、その大胆な動きから、清姐さんがどれだけウキウキしていたかがわかる。

和歌の世界において、「霞」は春の訪れの徴とされてきたが、その季語の登場によって、これからやってくる新しい季節に託された希望もばっちりと表現されている。太陽暦が導入されて以来、お正月の時期に春霞を期待しても無理だが、平安人の旧暦が日本の詩歌にうたわれている季語とぴったり合っていたはずである。

この文章を通して清少納言の目に映っていた素敵な風景がありありと浮かび上がってくるけれど、やはり元旦は特別な日なのだ、と改めて気づかされる。

古典作品の中にたびたび登場するお正月シーン

見てきたエピソード以外にも、古典文学の作品のなかでは、お正月はたびたび話題に上る。

夫兼家にとうとう素通りされてしまう道綱母の悲しい年越しもあれば、特注した着物を愛人の皆さんに配り歩く光源氏のバブリーなお正月もある。過ぎ去った日々への思い出も、これからやってくる冒険への高揚感も和歌を通して語られ、どの読者でも心の琴線に触れる、自分にぴったりな「古典的なお正月」に出会えるはずだ。

次は素敵な年になることを心から願いながら、平安女子の言葉に導かれるがままに、私はもう少し読み進める。

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