「イカゲーム」旋風をもたらしたビジネスモデル サブスク王者・ネットフリックス急成長の20年
オリジナル作品に惜しみなく投資し、かつ、ユーザーの趣向をビッグデータで分析することで、良質なコンテンツをこれでもかというくらいにユーザーに提案し、継続せずにいられないサービスにまで高めることに成功しました。
そのうちの1つが、古くは2013年の「ハウス・オブ・カード」、最近では「イカゲーム」です。
これは、映像の流通業から映像製作会社へと舵を切ったことを示しています。コンテンツ業界のSPA(製造小売)へと、さらに価値創造を進化させたのです。
今や、ネットフリックスは、作品を製作して流通する巨大スタジオに変貌し、映画産業を脅かす存在になりました。ライバルはほかの映像配信サービスではなく、ハリウッドのメジャースタジオになったのです。実際、ハリウッドメジャーが独占していたアカデミー賞に、多くのネットフリックス作品がノミネートされ、受賞にまで至っています。
パラマウント・ピクチャーズをはじめとする既存のメジャースタジオの価値獲得は、投資家から多くの資本を調達し、巨額の費用を投じて映画製作し、資金を回収する形をとりますが、思いどおりに資本調達できないことがある、出資者やスポンサーに配慮するあまり、作品の質に悪影響を及ぼすことがある、といった問題があります。
一方、ネットフリックスは、ユーザーからの定額の会費を製作費に充て、足りない分だけをファイナンスしているので、スポンサーに振り回されずユーザーの意向に沿った作品提供が実現しています。
「定額制サブスク」に最適化した価値創造の強さ
ここで注目したいのは、ネットフリックスは創業間もない頃から現在に至るまで「定額制サブスクリプション」という会費を徴収する価値獲得を採用し続けていることです。定額制サブスクリプションは、契約の縛りはほとんどなく、いつでも辞められるユーザー有利の価値獲得です。
それを採用し続ける以上、中毒性のある作品を意図的に次々と配信し、継続してユーザーに会員になり続けてもらわなければならない。優良コンテンツを製作し続けているのは、価値獲得の特性を十分に理解している同社が、必然的に行う価値創造といえるのです。
「イカゲーム」の制作費は、1話当たり約2億7000万円といわれています。会費で得た資金を惜しみなく投資し、ユーザーから得られるビッグデータも存分に活用することで、多くの人が求めている中毒性のある作品提供が実現しているのです。
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