「とろみ飲料」自動調理器が介護施設で担う使命 富士電機が投入、人手不足解消のカギとなるか

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自販機製造メーカーは撤退が相次ぐ(写真:記者撮影)

自動販売機大国の日本。駅や公共施設など、あらゆる場所に自販機は設置され、飲料などを気軽に購入することができる。一方ですでに市場は飽和しており、人口減少も見込まれるなかで設置台数は頭打ちだ。2010年に520万台だったのが、2020年には404万台に減っている(日本自動販売システム機械工業会)。

こうしたことを背景に、自販機製造メーカーも撤退が相次いだ。2020年にはパナソニックが撤退し、残る国内メーカーは富士電機とサンデン・リテールシステムの2社だけだ。

さらに新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で、自販機業界には逆風が吹いている。一方で人手不足対応や、接触リスク低減のために、自販機の技術を活用できないかという取り組みが進んでいる。

とろみ飲料を作るのは大仕事

その1つが、富士電機が開発した「とろみ飲料の自動調理器」だ。介護施設や病院では、のどの機能が弱くなっているお年寄りなどに少し粘り気を出した飲み物を提供している。さらさらの液体のままだと、誤って気管に入ってしまい、誤嚥性肺炎につながるおそれがあるからだ。とろみをつけることによって、のどを通る速度が遅くなり、誤嚥を防げる。

だが介護施設で「とろみ飲料」を作るのは大仕事だ。お茶やコーヒーなどに一杯ずつ所定のとろみ剤を入れて、スプーンで混ぜなくてはいけない。多人数分を1日に何度も作ると、腱鞘炎になってしまう職員もいるほどだ。介護業界では人手不足が深刻で、こうした作業をする1分1秒が惜しい。

「コーヒーや味噌汁の自動調理器があるのだから、とろみもつけられないのか」富士電機自販機部門の中核工場である三重工場(三重県四日市市)で、そんな話が持ち上がったのは2019年春のことだった。介護施設の苦労を聞きつけた社員が企画部門に持ち込んだのだ。

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