「とろみ飲料」自動調理器が介護施設で担う使命 富士電機が投入、人手不足解消のカギとなるか

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発電設備やプラント、パワー半導体が稼ぎ頭の富士電機にとって、自販機などの「食品流通」部門は傍流だ。2021年3月期の部門売上高は766億円と、全社売り上げ(8759億円)の1割に満たない。加えて、コロナの影響で53億円の営業赤字に陥る始末だった。国内の市場拡大が見込めないなか、中国など国外への進出に活路を見いだすが、思うように浸透できていない。

コロナからの反転を期す2022年3月期は27億円の黒字に回復する見込みだが、全社の営業利益見込みが670億円と過去最高予想になっていることと比べると心もとない。

新たな市場の開拓は急務

もともと、洗濯機やジューサー、冷蔵庫などの家電製品を製造・販売していた三重工場が生き残りをかけて参入したのが自販機部門だった。後に家電部門からは撤退することになったが、得意の電気技術を生かした省エネ性能など、ニーズに沿った自販機を投入。参入当時は20社以上がひしめく激戦分野だったが、生き残ることができた。今、再び苦境に立つなか、新たな市場を開拓する試みは急務だ。

「最初は『とろみ調理器』なんて需要があるのかと思ったが、調べてみるとニーズは思ったより大きいとわかった。高齢化社会に貢献できるという点でも一石二鳥だ」と、秋本氏は語る。社会課題解決がビジネスの課題も「解決」するか、こうした地道な取り組みの積み重ねが重要になってくる。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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