価値「創造」だけでは本業不振は脱せない理由 30分類の価値獲得で考える利益イノベーション

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ビジネスモデルとマネタイズの専門家である川上昌直氏が、従来のイノベーションの議論では軽視されていた、「価値獲得(利益)」起点のビジネスモデルの考え方を論じる(写真:HAKINMHAN/iStock)
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かつて日本企業が率先して取り組んできた「価値創造」では利益が出なくなっている。特にもの売り企業、ものづくり企業には、さらにコロナ禍が後押しして窮地に追い込まれ、待ったなしのところが多い。
そこで昨今、キーワードになっているのが「収益多様化」である。本業が伸び悩んだ今、新規事業による新たな価値づくりばかりに目を向ける動きが多いが、それよりも大切なのは、既存事業をきちんと立て直し、いかに利益獲得のためのイノベーションを起こしていくかにある。
以下では、11月に刊行された『収益多様化の戦略』の著者であり、ビジネスモデルとマネタイズの専門家である兵庫県立大学教授の川上昌直氏が、従来のイノベーションの議論では軽視されていた、「価値獲得(利益)」起点のビジネスモデルの考え方を論じる。

価値「創造」よりも価値「獲得」を

ビジネスモデルは、価値創造と価値獲得の融合によって「顧客が喜び、企業が儲ける仕組み」を作り出すことですが、実際には、「価値創造」のほうに重きが置かれていました。すなわち、明確にターゲティングした顧客に良質なプロダクトを提案し、それを効率的かつ効果的に顧客に届けるシステムを設計することに主眼が置かれていたのです。

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一方、企業が事業活動から利益を得る「価値獲得」は、主に、プライシング(価格設定)をうまくやり、販売製品から利益を生み出すことを指します。

これがものづくり企業にとって唯一の利益の柱でしたが、デジタルによる既存事業の破壊や、世界規模のロックダウンによる経済危機を経験するなかで、従来の方法のまま、期待水準以上の事業利益を出すには限界が見え始めています。

このような状況下でもうまくいっている企業は、価値創造ではなく、価値獲得からビジネスモデルを捉え直しています。多様な収益源によって価値獲得を駆使しているのです。

GAFAをはじめとするメガテックベンチャーは、つねに価値獲得を念頭に置き、価値獲得のイノベーションをしてきました。もちろん、これら企業の価値創造イノベーションが秀逸であることに疑いの余地はありませんが、価値獲得がとがっていたからこそ、価値創造もほかにはないイノベーションへとつながり、既成の枠に収まらない革新的な事業を生み出しているのです。

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