人が感動する物語をつくる2つの大きなポイント どん底の状態や悲劇があってこそ心を動かされる

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エンタメ作品において、より人を惹きつけるドラマカーブを描くために最も重要視されるのは、「③ボトム」と「⑥クライマックス」の高低差です。

なぜなら、観客がクライマックスで得られる達成感は、ボトムとの高低差に比例するからです。これは、少し前に「V」における高低差の体感度で話したことと同じです。

クライマックスでの達成感は、本来はスタート地点との高低差です。しかし下記の図を見てもらうとわかるように、一度落ちることによって、不思議なことにボトムからの高低差が体感的な達成感になるのです。

そのためドラマや映画では、できるだけボトムを落としたうえで、できるだけクライマックスを上げて高低差を作ろうとします。

ボトムを下げるには、強い敵など障害を降り掛からせ、主体をピンチにします。目的達成を困難にしつつ、達成不可能と思うギリギリまで追い込むのです。どん底の状態まで行ったら、今度は逆に、なんらかの克服や気づきを経て再起し、クライマックスでは無事に目的を達成します。この高低差が大きければ大きいほど、達成感が高まるのです。

もう1つ、クライマックスで重要なのは、観客に抱かせていた期待にきちんと応えることです。どんなに劇的なクライマックスでも、期待していたものでないと達成感は感じられません。人は期待していないものには反応できないからです。

悲劇が教えてくれるプロセスの重要性

ここまで、ストーリーの黄金率とも言えるドラマカーブについて説明してきました。しかし、こんなふうに思う人もいるかもしれません。「ボトムとクライマックスの高低差ではない部分に感動することもあるのではないか」と。

これはとても重要な指摘で、結論から言えば、時には別の方法で人の心を惹きつけることも可能です。その手がかりは、前回話した「内的CQ」そして「悲劇」というストーリーの型にあります。

悲劇の定義は「ハッピーエンドで終わらない」ということですが、ドラマカーブで言えば①で提示されたCQが非達成で終わること、あるいは始点より終点が低く終わるということになります。

先に見たように、基本的に人間は上向きの矢印を好みます。それなのに、なぜ下がったまま終わる悲劇が成立するのでしょうか。アンハッピーで終わるストーリーをわざわざ見届けたいと思う人は少ないはずです。序盤に抱かせた期待が叶わないというのは、がっかりさせてしまう可能性も高いです。

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