人が感動する物語をつくる2つの大きなポイント どん底の状態や悲劇があってこそ心を動かされる

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映画やドラマは、ストーリーの最小単位である「V」を組み合わせつつ、全体でも一つの大きな展開を描いています。その大きな展開として、私が多くのドラマや映画などで基準となる構成として考えているのが次の図です。

時間軸にそって、物語の展開の浮き沈みを曲線で描いたこの図を、私は「ドラマカーブ」と呼んでいます。このドラマカーブは、主に1時間くらいのドラマや、2時間くらいの映画の構成に適しています。特にディズニーのアニメなど、王道と呼ばれるような物語は大体この構成に当てはまっています。それほどまでに、多くの人の心を捕まえて離さない構成と言えるのです。

ドラマカーブの7つのポイント

多くの作品に通用する「ドラマカーブ」ですが、その中には、大きく7つのポイントがあります。その7つのポイントと、それぞれが持つ役割は、図のとおりです。

①「CQ」 CQを提示し、最後まで見届けたいと期待を高める
②「プチハッピー」 いい調子で上昇し、迎える序盤のピーク
③「ボトム」 目的達成がほぼ不可能なほど、どん底に落ちる
④「再起」 何かしらの転機を迎え復活する
⑤「上昇」 再起したあと、グングン上昇する
⑥「クライマックス」 CQの結果が出る(基本的には達成する)
⑦「プラスα」 伏線の回収、あるいは次へのひっぱり

ドラマカーブの具体的な例として、御三家映画の『千と千尋の神隠し』で説明したいと思います。下記の図は、私が『千と千尋の神隠し』を見て作ったドラマカーブです。

①「CQ」:主人公・千尋は別世界に迷い込み、両親が豚に変えられてしまう。「はたして両親を救い出し、無事に元の世界に戻れるだろうか?」というCQが提示される
②「プチハッピー」:ハクという少年に助けられ、湯屋で働く中で千尋は成長し、居場所を見つけていく
③「ボトム」:これまで千尋を支えてくれていたハクが、銭婆の契約印を盗んだがために重傷を負い、死にそうになる
④「再起」:ハクを助けたい一心で、千尋は危険を顧みず銭婆に会いにいく決心をする
⑤「上昇」:湯屋で暴れるカオナシを大人しくさせ、電車に乗って銭婆の家に向かう
⑥「クライマックス」:千尋とハクの過去が明らかになり、ハクは自分の名前を思い出す。千尋は湯婆婆の試験をクリアして自由の身となり、無事に元の世界へ戻る
⑦「プラスα」:ハクと再会する
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