人が感動する物語をつくる2つの大きなポイント どん底の状態や悲劇があってこそ心を動かされる
面白そうだと思っていた映画が、実際に見てみたら期待外れで、時間を無駄にしたと思ったことはありませんか? 映画に限らずさまざまなエンタメ作品で、出だしは面白そうだったのに途中から興味が薄れ、最後まで辿り着かなかったという経験は、多くの人にあると思います。
映画などを作る時には、まずは期待させることが重要で、それをCQ(セントラル・クエスチョン)という形で表現しています(参考記事:「周りの期待に応えられる人と裏切る人の決定的差」11月20日配信)。そして、その期待を最後まで抱かせるのに必要になるのが「構成」という技術です。
いかに効果的な流れを作るか
拙著『「物語」の見つけ方 ー夢中になれる人生を描く思考法』でも詳しく解説していますが、構成の基本は、要素の順番を組み立て、いかに効果的な流れを作るかを考えることです。CQによって抱かれた「期待」が、その目的がかなうクライマックスの瞬間まで途切れないように誘導していく。そうすることで、最後まで見届けてもらえて、クライマックスが最初の期待に応えるものであれば、満足してもらえるのです。
では、人はどんな構成に惹きつけられるのでしょうか。それを考えていくために、いくつかの図を見ながら考えていきたいと思います。
上に並んだ3つの矢印は、ストーリーの展開を示した図です。左端がストーリーの始まり(始点)、右端がストーリーの終わり(終点)を意味しています。上がり下がりはストーリーの「盛り上がり」を示していると考えてください。
(外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
この中で、見ている人がいちばん好ましく思う展開を表している矢印は、どれだと思いますか?
おそらくほとんどの人が、右肩上がりの矢印を選択すると思います。株価のグラフをイメージするとわかりやすいですが、人は時間と共に上がっていくものを本能的に好みます。
ではもう一問。次の2つの矢印だとどちらを選びたくなるでしょうか?
これは、好みが分かれるかもしれません。どちらも始点と終点の高さや、経過している時間も同じですが、右側の矢印は途中で落ち込んでいます。人によっては、少しでも落ちるのは嫌だという人もいるかもしれません。
しかし、ストーリーをドラマチックに見せるという意味では、右側の矢印が描く展開のほうが効果的です。それは、下降から上昇に反転した時に、上昇感が高まるためです。人は慣れる生き物なので、ずっと同じような上がり幅だと、体感的に上昇感が薄れてしまいます。
実際、どんな複雑なストーリーも、細かく分けていくと、このような「V」の組み合わせになっています。「構成」とは、この「V」をいかに組み合わせ、最後まで見届けたくさせるか、その過程を描いていくことなのです。
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