8月の「人流5割削減」提案が示唆する大事な教訓 第6波に向けて分析体制をどう構築したらいいか

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10月末の東京・新橋の様子。人の流れが少しずつ戻ってきている(写真:Soichiro/KoriyamaBloomberg)
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東京都で7月後半~8月前半に感染が急拡大し医療逼迫が深刻化する中、コロナ分科会は8月12日に「期間限定の緊急事態措置の更なる強化に関する提言」を発表し、その中で「8月26日までの集中的な対策の強化により、昼夜を問わず、東京都の人流を今回の緊急事態措置開始直前の7月前半の約5割にすることを提案」した。

(外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

8月中旬以降、人流は増えたが感染は急減した

8月12日時点でさまざまな人流データは7月前半レベルから約2~3割減少していた。従って、7月前半からの5割は、8月12日からの約2~3割の追加削減を意味する。実際には、この提案の目指す方向とは逆に、(お盆休みという理由で一時的に多少低下したものの)その後人流は増加傾向に転じた(例:グーグルモビリティ<娯楽・小売り>)、もしくは下げ止まったが(例:主要繁華街滞留人口(図))、それにもかかわらず感染は8月後半から急速に減少した。

8月前半から追加的に人流が削減されることなしに感染が急速に減少に転じたことは喜ばしい。提案どおりに人流をさらに削減する政策が取られていたら、社会経済への追加的な負担が生じていたと推測する。

このように振り返ると、事後的には8月12日の分科会の人流5割削減提案は的外れだったと思う方もいるかもしれない。しかしながら、過去の分析・提言等を検証するときには「その当時のデータ・情報を基に判断すると、その分析・提言は妥当であったか」という視点も大切だ。

この論考では、そういった視点から8月12日の人流5割削減提案を検証し、その検証に基づいて将来起こりうる第6波で分科会がより説得力のある提言をするためにはどのような分析体制を構築すべきかを考察したい。

この論考は最近公表した「第6波に向けての分析体制の構築―8月12日の分科会「人流5割削減」提案からの教訓―」(藤井仲田)というレポートに基づく。この検証部分の根拠となる資料の幾つかは以下に掲載している。(https://covid19outputjapan.github.io/JP/files/FujiiNakata_0812Review_References_20211119.pdf

なお、このレポート・論考は11月14日の分科会勉強会で発表させていただきき、そこでいただいたコメントを反映している。尾身茂会長、脇田隆字会長代理、押谷仁東北大学大学院教授をはじめとして出席者の皆さまに建設的なコメントを数多くいただいた。

人流5割削減提案を総括的に評価するためには、人流削減の社会経済への負の影響も考慮する必要がある。また、そういった総括的評価は、感染リスクと社会経済へのリスクを相対的にどのように評価するか、不確実性とどのように向き合いたいか、等にも依存する。この論考ではもっと局地的に、5割という数値目標の妥当性を当時のさまざまな研究チームから提出されていた分析を基に評価するにとどめる。

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