ワクチン接種が行き渡った後に避けられない難題

医療提供体制を拡充できなければ多方面に悪影響

高齢者向けのワクチン接種はかなり行き渡り、あとは若い世代の接種率をどれだけ上げられるかだ(写真:Soichiro Koriyama Bloomberg)

2021年9月8日に開催された新型コロナウイルス感染症対策分科会で「緊急事態措置解除の考え方」が発表された。

緊急事態宣言の解除基準

これは、緊急事態宣言の発出や解除について、感染状況と医療提供体制の負荷の両面を考慮していたものを、主に医療提供体制の逼迫を重視していくことに転換することを示したものだ。高齢者のワクチン接種が進み、感染者の中心が若年層になってきたため、感染者の多くが軽症者や無症状者になってきたことを反映している。また、有効な治療薬が普及し始めたことも感染者数から医療提供体制の逼迫度を重視するようになったことの理由である。

日本でのコロナワクチン接種の開始は、アメリカやヨーロッパ諸国と比べると遅かった。しかし、高齢者への接種が開始された5月以降、職域集団も加わり、ワクチン接種率は早いペースで上昇した。9月10日時点で、1回以上接種した人は61.9%、2回接種完了者は49.8%に達している。さらに、65歳以上の高齢者に限ってみると、2回以上接種した人の比率は87.8%と約9割になっている。

7月半ばから感染力が強いデルタ株が主流になったため感染者数が大きく増加したが、8月末から感染者数が減少してきた。ワクチン接種率の上昇効果もあるとみられる。この間の感染拡大は、高齢層でワクチン接種が行き渡っていたため、それまでの感染拡大と異なり、中年層や若年層での感染拡大だった。

この年齢層でもワクチン接種は進んでいたが、デルタ株の感染力が上回ったために、未接種者の間での感染が広がったのである。中年層における重症化率は、高齢層よりも低いが、感染者数が大きく上昇したために、重症者の絶対数も増え、首都圏を中心に医療提供体制が逼迫したのが8月の状況だった。

9月になって新規感染者数の減少が続いている。2021年夏の感染拡大が落ち着き、希望者にワクチン接種が行き渡った後、新型コロナウイルスの感染はどのようになるのだろうか。今後も緊急事態宣言は発出されるのだろうか。

ワクチン接種が希望者に行き渡った後

ワクチンの接種が希望者に行き渡った場合でも、日本の接種率は90%を超えることはないと予想されている。65歳以上の高齢者でワクチン接種率が約90%であるので、それ以下の年齢層ではもっと低くなるだろう。

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