これらを踏まえて、第6波に向けて分科会はどのような分析を心がければよいのかを考察したい。2点ある。
1点目は、より現実的な仮定に基づく見通し・多様な視点からの分析を参考にするということである。コロナ分析では新しい重要要素が次々と出てくる。欧米と比べて歴史の浅い日本の実践的感染症数理モデル研究コミュニティーのリソースだけでは、学術的な研究も行いながら、政策判断の役に立つさまざまな要素を考慮した見通しを機敏に作成することは難しい。日本ではAI-Simチームが、そういった見通しを(学術的な質はそれほどに高くないかもしれないが)作成している。
前述したとおり、これまでも分科会メンバーは藤井仲田分析を含めAI-Simチームの分析を時折参考にしてきたが、今後は、これまで以上に積極的にAI-Simチームとの連携を取ることが望ましいと考える。
具体的には、AI-Simチームの定例会に分科会メンバーが定期的に参加する、ABにAI-Simチームが定期的に参加する等の制度化をする。そういった定期的な交流は、分科会メンバーが常日頃から現実的な仮定が置かれた見通しを眺める環境を作り出すことができるだけでなく、感染症数理モデルをもともと専門としないAI-Simチームの分析の学術的な質を向上させることにもつながる。
妥当性は1つのモデルではなくさまざまなモデルで検証を
2点目としては、もし何かしらの数値目標を使用して政策提言するのならば、その妥当性は1つのモデルではなくさまざまなモデルで検証して、その数値目標の頑健性を確認することである。そうすることで、提案する数値目標に説得力が生まれる。
お手本は前述したいくつかの疫学モデルチームからなるイギリスのSPI-M-Oである。だが、東京大学数理科学研究科の稲葉寿教授(感染症数理モデル・人口数理モデル専門)の言葉を借りると、一部の研究者の献身的な努力にもかかわらず、「日本の(実践的な感染症数理モデル)研究体制は非常に遅れている」。
日本における感染症数理モデル研究が発展し、将来のパンデミックが起きる前に独立した研究チームがいくつか誕生していることを願う一方で、現状では、この2点目においてもAI-Simチームをはじめとした他分野専門家とのこれまで以上の連携が効果的だと言える。
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