吉村vs枝野「勝敗を分けた話し方」プロが大研究 「他党批判ばかり…」総選挙で見た「戦略の違い」

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雨のそぼ降る中、JR有楽町の駅前で「日本維新の会」副代表の吉村洋文大阪府知事の話を聞きましたが、少し意外な感じがしました。大きな声で舌鋒鋭く、他党をこき下ろしている姿を想像していたのに、案外、声はか細く、そこまで「怒気が伝わってこなかった」からです。

一方の「立憲民主党」の枝野幸男代表と聞けば、やはり自民党を批判し、怒鳴っているイメージを思い浮かべる人が多いでしょう。実際に演説を聞くと、そういった内容だけではないのですが、どうしても「批判の部分だけ」が印象に残ってしまいます。

自民党の政治家でも、安倍元首相などは悪しざまに他党を中傷する言葉を使っていましたが、岸田さんはそういうタイプではないようです。

ある週刊誌で、池上彰さんが「(岸田さんが)他党を批判しないことに安倍元総理は不満らしく、終盤になって『野党を批判しろ』との指令が飛んだという情報がある」と書いていました。

果たして、政治家のこうした「他者批判」や「怒り」は票になるのでしょうか、ならないのでしょうか

支持者拡大に結び付くのは「叱責」か「実績」か

政治心理学の学術誌に発表されたオランダの大学の研究では、「怒りを込めた政治的メッセージは『不適切』と考えられやすく、好感度や能力の評価を下げる」と結論づけられました。

ただ、「その思想に共感する支持者は、政治家の怒りのメッセージを好意的に受け止めやすい」という結果も出ています。

つまり、批判や怒りは、そもそも、「その政治家をもともと支持しているような人」を喜ばせる効果があっても、「中間派」や「無党派層」にとっては、反発を招きやすく、支持者層の拡大にはつながらないということです。

実際に、岸田さんの「批判をしない手法」は功を奏した一方、立憲民主党の過度な「怒り」や「批判」は多くの人の失望を呼び、支持者拡大を妨げたとも考えられます。

人は「教条的なメッセージを上から目線で押し付けてくる人」に本能的に嫌悪感を抱きがち。グレタさんの話し方を生理的に受け入れられない人がいるのもこういう理由です。たとえ、その「言い分」に理があったとしても「言い方」に「情」が感じられなければ、心を動かすことはできないのです。

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