バス大異変!--知られざる公共交通の実像
零細バス事業者に新車を買う余裕はない。安価な中古車を購入する例も目立つ。中古バスの販売台数は増加傾向にあり、08年は1万6193台で、新車(1万5333台)を上回った。インターネット上では、中古車売買のサイトも多い。大型路線バスからハイデッカーの観光バスまで、あらゆるタイプのバスが売りに出ている。10年落ちで50万キロメートル以上走っているバスもある。こうしたバスなら、確かに安く買えそうだ。
これだけ経費を切り詰めても、収入低下に追いつかず、地方ではバス事業者の約9割が営業赤字というありさま。だが、それでも経営できるのは、路線維持のため国、都道府県、市町村から補助金が出るためだ。10年度は国の地方バス路線維持費補助制度として68億円、地方公共団体に対する地方財政措置として750億円が計画されている。補助金によって乗合バス事業の赤字の相当部分が補填される仕組みだ。
補助金頼みには後ろめたいイメージもある。だが、「赤字だから補助金というのではなく、自治体から運行委託を受けていると考えるべき」と、バス会社3社を傘下に持つみちのりホールディングスの松本順社長は胸を張る。確かにこうした発想も一理ある。
乗合バス業界で唯一の成長源である高速バスも、足元ではツアーバスという新たなライバルと激しいつばぜり合いを演じている。
ツアーバスとは、旅行会社が旅行商品として主催し、貸切バス会社に運行を委託する、いわばパックツアーの変型版だ。ツアーバス最大手のウィラートラベルも「当社は旅行会社」(村瀬茂高社長)と言い切る。路線バスではないため、料金(運賃ではない)設定も運行経路も自由自在。最近の乗合バスに義務づけられている車いすスペースも設置する必要がない。「彼らはその分だけ、客を多く乗せることができる」と、ある路線バス会社の幹部はぼやく。