女子野球がゆるやかな上下関係を大切にする理由 履正社高の橘田恵監督が語る日本野球の課題

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学校側でもこの快挙に驚き、高校女子野球部の創設が決まった。履正社高校と言えば、男子も大阪桐蔭と並ぶ屈指の強豪校だ。

「男子野球部監督の岡田龍生先生は、月曜日はグラウンドを女子のために開放してくださいました。また何かと応援してくださいました。さらに専門学校の男子チームなどさまざまな方のご支援でチームを強化することができました」

(写真:筆者撮影)

2016年からは、大阪府箕面市に本格的な照明設備やロッカールームも完備したグラウンドを持つ箕面キャンパスができ、練習環境も充実した。橘田は、この恵まれた環境で、チームづくり、選手の育成に取り組んだ。

ゆるやかな上下関係を大切にする理由

「当時は専門学校の監督も兼務していましたが、よその高校から専門学校に来た選手は、“上下関係、すごくゆるやかですね”といわれました。たぶん、初めて見た人は誰が上級生で、下級生かわからないと思います。私はそこを大切にしたいんですね。海外では監督と“このプレーについてどう思うかちゃんと話ができないといけない”と教えられます。自分が選手として向上するためにも一方通行はだめなんですね。指導者や先輩とも、意見交換できるようにならないと。

日本の野球は、なにをいってもハイ、大きい返事でハイ、わかってないのにハイ、になりがちですが、それでは社会人になって困ると思います。練習中でも同じです。私はときどき、ノックを打ちながら、選手に“わかったか?”と聞きます。選手が“ハイ”というと、“何がわかったん?”と突っ込んだりします。関西人のノリですが、そういう部分は大事だと思います」

筆者は女子野球の現場を見てきたが、練習時の空気は男子とは大きく異なっている。女子野球では、先輩の投球フォームや打撃フォームに、後輩が「ここがいいけど、ここがおかしい」とアドバイスするようなことが普通にある。シューズバッグにつけたチャームを、先輩後輩が褒め合ったりもしている。上下関係は当然あるが、男子のような軍隊調ではなく、もっとやわらかでしなやかだ。

また、女子選手は自分が試合のベンチから外されたり、背番号をもらえなかったりすると「なぜそうなのか」について、指導者に説明を求める。大会の出場メンバーを発表した日には、監督室の前に選手たちが列を作って並んだりする。少なからず男子とは異なる「文化」があるのだ。橘田はこれも女子野球の発展していく過程の1つと大事にしている。

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