佃 光博
前回はゆとり教育、そしてその影響を受けたゆとり世代について述べた。2010年入社の若者(1988年4月以降生まれ)は、学習指導要領(高等学校)2002年改定、2003年実施のゆとりカリキュラムを受けた「ゆとり第1世代」と呼ばれているが、ゆとり教育はそれ以前から始まっている。2009年までに入社した若者もゆとり世代なのだ。
したがって学生だけでなく、すでに企業人として働いている人間もゆとり世代だ。企業人の学力についてはデータが存在しないので、20年前、30年前と比べどのように変化しているのかを調べることはできないが、かなりひどいレベルであることは間違いない。今回は若手の劣化について考えてみる。
●人事も就職情報会社の採用コンサルもゆとり世代の若者たち
企業人の中でメディアと関わる人は広報部門と人事部門だ。外部の代理店や制作プロダクションに発注して、広報パンフレットやホームページを製作する。人事部も採用のためにホームページや入社案内を作る。 制作プロダクションの関係者が集まったときによく指摘されるのが、広報や人事の質の劣化だ。特に日本語がおかしく、一般常識に欠けることも多い。学生の中には、人事部や社員が採用ホームページの文章を書いていると思っている人もいるかもしれないが、それはごく稀な例だ。まず外部の専門ライターが取材して原稿を書く。この原稿を人事部に提出してチェックしてもらう。つぎに人事は訂正指示(「赤字」という)を書き込んで制作業者に戻す。ここからが問題だ。制作業者は、人事の赤字の解釈に苦しむことが多い。正当な指示なら問題はないが、指示が何を意味しているのかの判断に迷うことがある。そしてその指示が日本語として間違っていることがとても多い。
当たり前だ。小中高の間にまとまった文章を書くのは読書感想文くらいだろう。大学ではリポートを書くこともあるし、卒論も書く。就活のエントリーシートに作文を書くこともある。しかしそれくらいのものだ。文章を書くことに慣れている人はほとんどいない。つまり若手の人事はシロートだ。
シロートでもいったん入社して人事部に配属されると発注側になる。そして配属されると上司は経験を積ませようとして、外部の制作業者とのやり取りを任せる。社会人としても半人前の若手が会社を代表して採用広報の原稿に手を入れているわけだ。
こういう業務を担当しているのは20代後半から30代が多く、ゆとり世代である。採用広報の原稿はどこも似通っているが、その理由のひとつはライターが自己規制し無難に原稿を書き、人事が無茶な訂正をしないようにしているからだろうと思う。
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