(第35回)【変わる人事編】企業人事、就職情報会社の営業、制作会社の編集はゆとり世代

 そこで身体的に能力を高めようとするのが演劇ワークショップだ。演劇ワークショップは劇作家・演出家の平田オリザ氏とオフィス・サンタ代表の鈴木あきら氏が開発した手法だ。演じることで他者との空間(関係)を円滑にする研修だ。新人にも若手社員、中堅管理職にも有効だ。

 『AERA』(朝日新聞出版)4月12日号には、日本NCRで実施された演劇ワークショップが紹介されており、「透明縄跳び」をする社員の様子が掲載されていた。このトレーニングは「言葉」ではなく「空気」で指導するためにリーダーが方向性をひとつにするための訓練。これまでの研修風景からかけ離れた奇抜な研修だ。
 奇抜だが、参加者の意欲と満足度は高いようだ。当たり前かもしれない。どこの企業でも最重要の人事課題は、採用と教育だ。ところが教育研修に関しては工夫がなく、外部業者に任せっきりのことが多い。そして研修参加者は「またか」という「やらされ感」が強い。演劇ワークショップはそんな退屈な研修と無縁。演じることによる異次元の体験が得られる。これは面白い試みだ。

 演じることは「嘘の時間を生きる」ことだ。リアリティを持たせて演じるためには、嘘ではない「本当の自分」がどう考え、どんな風に動き話しているかを振り返らなくてはならい。また、他者と一緒に演じることによって、普段気づかない互いの行動特性を確かめ、自分自身の思考と行動の癖に気づく。

 「自分らしく生きなさい」と教えられてきたゆとり世代に欠けているのは、こういう本当の自分への気づきなのだ。皮肉なことに就活でも「自己分析」「気づき」の重要性が強調されている。「親や友人に自分について批評してもらいなさい」という指導もある。だがそういう紙や会話による座学では、気づけない。だれかを演じる嘘の時間によって、自分や他者が浮かび上がってくるのだ。

佃 光博(つくだ・みつひろ)
早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年、(株)文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。84年、(株)ピー・イー・シー・インタラクティブ設立。87年、学生援護会より技術系採用メディア「μα(ミューアルファ)」創刊、編集長。89年、学生援護会より転職情報誌『DODA(デューダ)』のネーミング、創刊を手掛ける。多くの採用ツール、ホームページ制作を手掛け、特に理系メディアを得意とする。2010年より、「採用プロ.com」を運営するHRプロ嘱託研究員を兼務。
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