佃 光博
企業は社員を早く戦力化したいし、できるなら一流人材に育てたいと願っている。そういう問題意識を人事部に対して行った調査データはたくさんある。しかし、社員に対する意識調査は少ない。
新卒で入社したばかりの若者の意識調査はたくさんあるが、すでに社員として働いている人間が会社をどう思っているのかのデータは絶無に近いのである。
例外がJTBグループの人事コンサルティング会社、ジェイティービーモチベーションズが5月10日に発表した「社長や会社に感じる『気持ちの上での距離』に関する調査」である。従業員500名以上の企業の会社員に対しアンケートを実施し、調査結果をまとめた。515サンプル(男性:416サンプル、女性:99サンプル)とややサンプルは少ないが、興味深いデータなので紹介したい。
●社長は違う星にいると、社員の2割が回答
社員教育にもさまざまなタイプがある。技能研修もあればマナー研修もあるし、コミュニケーション研修というものもある。しかし、研修によって養いたいものはスキルだけではない。会社への帰属意識、経営理念の共有、仕事へのモチベーション(やる気)は、スキル以上に重要だ。そして「社員は成長したいと願っている」「会社を発展させたいと思っている」「社長の経営方針を理解している」という前提で教育研修が実行されているはずだ。ところが、ジェイティービーモチベーションズが発表した「社長や会社に感じる『気持ちの上での距離』に関する調査」を読むと、これらの前提はまったくの的外れなのだ。
実際には社長との距離も会社との距離も限りなく遠く、経営理念の共有、会社との一体感は行われていないようだ。
社長との間にある、「気持ちの上での距離」はどのくらいですか
まず、社長との間にある「気持ちの上での距離」から紹介しよう。全体を平均して2割の社員が「違う星(4億キロ)」と回答している。「違う国」「違う都道府県」「同じ都道府県の別ビル」もそれぞれ2割。同じビルの「すぐそば」や「別の部屋、別のフロア」と回答したのはわずか2割なのだ。社員と言っても一般の平社員から役職者まで、いろんな立場があり、部長クラスでは同じビル内という回答は5割近いが、一般社員では85%近くが遠い遠い存在と回答している。企業規模が小さければ一体感が強いかというとそうでもない。確かに規模が大きくなると、距離が広がる傾向があるが、500~700人未満の企業でも、「違う星」と17.5%が回答している。
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