安河内:斉藤先生は日本を離れて長いと思います。私は日本の受験の専門家なので、日本の受験の仕組みを説明させていただくと、中学入試を行う学校というのは、主に中高一貫校。この中高一貫校というのは、結局、日本のエリートシステムを構築している学校になるんですけれど、その多くはいい大学に子どもたちを送り込むことを期待して、親が中学受験をさせている学校ということになるのです。
そうすると中高一貫校の入学試験問題というのは、今ある大学入試から逆算して、大学受験の縮小版みたいになっているんです。中高一貫校の目標に“生徒を難関大学に入れる”というのがありますから、難関大学に入れるには、中学に入る前にどういうことを勉強させたいかという、この変な一貫性があるのです。だから、このままもし中学入試に英語が導入されたら……。
斉藤:そこなんですよ! 大学入試の英語のミニチュア版になるでしょう!
安河内:そうなると、小学校における英語教育の導入は、完全に破壊されます。最悪の事態です。
斉藤:失敗するでしょうね。年齢にふさわしい教授法でない文法の教授法が中学入試から派生してきて、そうすると学習塾の教授法もそれに左右されることになってしまうので……。
安河内:みんな英語が嫌いになる。
斉藤:嫌いになるでしょうねぇ。
安河内:さらに英語が話せなくなるでしょう。
斉藤:音もめちゃくちゃになるでしょ。
安河内:非常に危険なんですよね、これがこのままいくと。
斉藤:このままいくとね。そこは、中学入試を議論することも大切なのでしょうし、小学校英語の教授法を議論することも大切なのでしょうけど、結局、本丸は大学入試を変えることだと思うんですよ。
安河内:おっ、斉藤先生もそう思いますか? ありがとうございます。
斉藤:僕は安河内先生の主張を綿密に調べて同調してるわけではなくて、もともとそう思ってますから。
安河内:それはうれしい! というのも、私はそれを具体的に進めることを頑張ってやってますから。今、国の政策としても、そういう方向で進んでいますしね。
まずはとにかく4技能
斉藤:率直に言って、これをやれば大学入試も少し変わるかなと思うことは、標準化されたスピーキング・テストを導入することではないですか。
安河内:まさしくそのとおりです。文科省でも、方向性は、まずは4技能試験の入試への導入です。標準化されたスピーキング、ライティング、リスニング、リーディングの4技能を均等で計る試験、資格検定試験の結果を提出して、大学入試で換算したり見なし満点にしたり加点したりして、今あるほぼ一技能の大学入試を4技能検定試験で代替していこうという歯車が、大きく回り始めました。
斉藤:現在の大学入試は1技能であるだけでなく、日本語を経由した英語なんですよね。京都大学の入試なんて典型的ですけど、あれは英語の試験ではなくて、英語を経由した日本語能力試験ですよね。
安河内:そうですね。英語とは別ですね。
斉藤:和文英訳とか英文和訳とかの技能は、英語を使うという意味ではそれほど役に立たないですよね。
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