音のない英語教科書!? CDぐらいつけろ! 日本の英語教育を変えるキーマン 斉藤淳(3)

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 こんにちは、安河内哲也です。元イェール大学助教授で、英語塾「J-PREP」代表の斉藤淳さんとの対談の続きです。日本の英語教育は何が問題なのか? 世界の「非ネイティブエリート」をよく知る斉藤さんにじっくり伺いました。
(1)「orange→オランゲ…スペルは気にするな!」はこちら。
(2)「レット・イット・ゴーじゃない、レリゴウ♪だ」はこちら。 

親が放置してくれたから、頑張れる

安河内:うちの親はすごくうまかったと思います。自分の場合は高校時代に部活しかやってなかった。登山競技をやってたんですけど、ずっとそればっかりで勉強なんてまったくしてなくて、当時偏差値50台の高校でビリから何番とかでした。それでも登山競技で一応インターハイで優勝したんです。

斉藤:インターハイで優勝って、すごいですね。何かで成果を出した経験って大切ですよね!

安河内:でも、ほら、それは親が放置してくれていたから、今も頑張れる、というのにつながっている。そこで受験があるからスポーツなんてやめなさいって言われていたら、結局、何に向かっても頑張らない人になっていた可能性もありますよ。あそこでとことんやった経験は大きいと思います。

斉藤:その経験があるから、やるぞと決めたときに頑張れるでしょ。

安河内:私が見ている生徒でも、部活をやるだけやって頑張った子のほうが、小さい頃からだらだらだらだらやってる子よりも伸びたりする。

斉藤 淳(さいとう・じゅん)
英語塾「J Prep斉藤塾」代表、元イェール大学助教授、元衆議院議員(2002~2003年、山形4区)
1969年、山形県生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業、イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授を経て、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。2012年に帰国し、東京・自由が丘で中学・高校生向けの英語塾を起業。自由に生きるための学問」を理念に、第二言語習得法の知見を最大限に生かした効率的なカリキュラムで、生徒たちの英語力を高め続けている。著書に『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA/中経出版)などがある。

斉藤:なんでもだらだらやらせすぎなんですね。

それとね、丁寧な教育というのは、先生が生徒と接する1人当たりの時間が多くないとできないですよ。日本の教育現場を見ていると、塾や予備校の先生は多数の生徒を受け持つでしょ。生徒のパーソナルな部分にまでは、なかなか手が届かないですよ。学校の先生は教科の指導と部活の指導と生活指導と全部やるんです。日本の教育の現場に丁寧な教育というのは、期待できないです。

イェール大学みたいに教員対学生の比率が1対7とか、1対5とか、そういう教育機関なら一人ひとり見て、生徒に介入するのかしないのかを判断します。介入するとなると無限にリソースはあるわけです。

安河内:その分、学費はお高いですよね……。

斉藤:めちゃくちゃ高いです。イェール大学だと全学費は年間500万円以上かかります。でも、大学側が学部生に使う教育予算の総額は1人当たり1000万円を超えています。基金からの繰り入れがあるので、高い学費を払っても、4年間でその倍近いおカネをかけた教育を受けることができます。ある意味、日本で国立大学の医学部に行くのと同じ水準のサービスが、どの学問分野でも受けられると言えます。これは明確に違うところですよね。あと、イェールだと、ほとんどの学生に奨学金が支給されるので、“定価”ほど高くはないんですけどね。

大学入試を変えないと、危険!

安河内:ここまでご自分の体験や教育に対するお考えを伺ってきました。小学校英語の教科化も決まっていますし、中学入試への懸念もあると思いますので、そのあたりに対する斉藤先生のお考えをお聞かせ願えますか。

斉藤:年齢相応の教授法、学習法というのはそれぞれ違いますよね。50音も書けない子どもにアルファベットの書き順を教えようとしても、なかなか厳しいものがありますよね。そういう年齢の子どもたちに英語を教えようとすると、やっぱり音声中心になると思うのです。ですけど、日本の漢字文化というのか、書いて教えないとものにならないといって無理強いすると、逆に英語が嫌いになったりするケースはあると思います。

だから、年齢に即した教え方をするのが大切です。そういった教授法や学習法に対する把握を、中学入試の出題者がどこまでできているのか気になります。

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