音のない英語教科書!? CDぐらいつけろ! 日本の英語教育を変えるキーマン 斉藤淳(3)

✎ 1〜 ✎ 39 ✎ 40 ✎ 41 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

斉藤:それ、まさにわれわれが直面している問題でもあります。でも、われわれの塾の売り上げとか、そういうケチくさい判断基準でスピーキング・テストを導入しろと言っているわけでは決してないですもんね。

ただ、現実問題として、高校1年生くらいになると、みんな受験参考書大手が出している単語帳とかを暗記し始めるんですよ。ここでスピーキング能力を鍛えてもなぁって。うちはパラグラフ・ライティングを教えてるんですけど、やっぱり英訳やんなきゃなぁって心変わりしちゃうんですよね。

予備校という英語教育の暗部

安河内:そういう意味では、私は大手予備校にいるわけなんですけど、予備校業界の空気に逆らって音声教育を取り入れた指導をしています。日本の長文の教え方というのは、テキストがあって先生が「ここが主語で、ここが述語で」ってSとかVとかって教えるんですね。それで生徒がテキストに線を引いたり印をつけたりするんですよ。日本語だけで授業のすべてが完結するんですよ。

斉藤:名詞節が主語になってますね、みたいな。

安河内:私はそれがダメだって、ずっと思ってたのですけど、やっぱり大手の組織の中にいるからなかなか変えられなかったのですが、昨年くらいからそれにメスを入れて、うちの予備校では、すべての長文にリピーティング用の音声とナチュラル・スピードの音声をつけて、生徒たちはこれをダウンロードして音声訓練をやります。これ、本当なら学校でもやらなくちゃいけないんですけど。

斉藤:僕も同意見ですね。

安河内:すべての長文に複数の音声をつけました。長文で学習したものは最後の効果測定として、耳で聞いてわかるようになるまで復習しなければならないし、その過程でネイティブ・モデルで音読しなければならないってことを、うちの予備校ではほぼ“憲法”みたいな感じにしたんですよ。

斉藤:うちの塾でも、英語の基礎を固める段階では、基本的に動画教材で教えてるのです。動画に出てくるボキャブラリーを全部シャドウイングさせて、シャドウイングさせた音声を回収して、どの母音の発音を直せ、どの子音の発音を直せっていう添削をしてフィードバックを返してます。

安河内:おお、すごい! はっきり言って受験参考書なんかやってるより、そちらのほうが受験でも点は取れるんですよね。

斉藤:そうそう、そうなんですよ。

安河内:今のテストの形態だと、そこに気がつかないのが残念なところですよね。

斉藤:うちに通っている生徒の実績を見ると、昨年ABCも読めなかった子が、1年余りで英検2級に1点だけ足りなく落ちましたっていうところまでくるんですよ。2級と言えば高校卒業レベルです。

安河内:いつもこればかり言ってるから読者のみなさんは飽きているかもしれないですが、問題の根源は、歪んだ大学入試に対して、さらに歪んだ解釈を与える予備校・塾業界なんですよ。そこが情報発信基地になっている。私はその中で20年以上教えてきてるから、その暗部はよく知ってます。

斉藤:私も学習塾を経営していますけど、塾業界というのは、そもそもはいらない業界で、僕の持論ですけど、教育というのはワン・ストップ・サービスのほうがいいと思うんですよ。日本の教育界全体の方向性として、学校にリソースを集中させて、学校での教育をもう少し丁寧にやっていくことに、改革の方向をこれから模索していかないと……。子どもたちは学校に行って塾に行って、移動だけでもかなりロスですし。

安河内:なるほど。

斉藤:カリキュラムにしても、たとえばうちの塾は学校のカリキュラムに合わせて作ってるわけじゃないので、学校との整合性がなくて生徒は大変なんですよね。

次ページ三木谷さん「教科書をタブレットにすれば」
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事