「1日40万売る」フライドポテトベンチャーの正体 小学校教員→海外で飲食店勤務→北海道で起業

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旅の出発地点となるオークランドで、まずは一杯やろうとバーに入った。そのときに、なんとなく注文したフライドポテトをディップにつけて口に含んだ瞬間、齋藤は目を見開いた。

「えっ……なにこれ!?」

外側はこんがりカリッカリで、内側はふんわりホックホク。噛めば噛むほど、イモの豊かな風味が口のなかに広がる。普通の値段で、特になにか工夫されている様子もないのに、それまで食べたフライドポテトのすべてがかすむおいしさで、手が止まらない。食べ終える頃には、特にフライドポテトが好きでもなかった齋藤の頭のなかが、カリッカリホックホクのイモで満たされた。

「これならいける! 間違いなくはやる!」

火山の噴火のように「謎の自信」が湧き上がってきた齋藤は、その旅の行く先々でフライドポテトを注文した。すると、ある有名なワイナリーで食べたポテトも、オークランドで食べたものに匹敵する衝撃を受け、さらに自信を深めた。あのオークランドのバーだけで作ることができる特別なものではないなら、努力と工夫をすれば自分でも再現できるかもしれない。

フライドポテトを、いかにビジネスにするか。旅をしながら毎日のように考えていた齋藤はある日、閃いた。

「北海道とのかけ算でいこう!」

急いで調べたところ、日本は冷凍フライドポテトを大量に輸入している一方(年間平均25万トン)、国産のジャガイモを使用したフライドポテトをうたっているところはほとんどないことから、「日本のフライドポテトは外国産のジャガイモを使っているところがほとんど」だとわかった。

「故郷、北海道の安心安全、おいしいジャガイモを使ってあのフライドポテトを出したら、絶対に売れる!」

2018年10月、根拠のない自信を深めて帰国した齋藤は、美唄にある実家に戻って家族に「フライドポテト屋を始める」と宣言した。留学前はヨルダンで教員に就くと言っていた息子の大胆すぎる転身に、両親も仰天したことだろう。

350万円でキッチンカーを準備

齋藤はまず、約2万円のポテトのカッターをオンラインで購入した。ジャガイモを載せてハンドルを引くと、ニュージーランドで食べたものと同じく1センチ角にカットされるマシンだ。これですぐに試作を始めた。北海道産のジャガイモは男爵、メークイン、こがね丸、とうや、キタアカリなど無数にあり、手当たり次第に買ってきてはフライする。

しかし、何度試してもまったくうまくいかなかった。どうしても、外側が「カリッカリ」に揚がらないのだ。齋藤にとって、そこはほかのポテトとの最も重要な違いであり、絶対に譲れないポイント。「だめかもしれない……」と諦めかけていたところで、光明が差した。

偶然にもある方法で揚げてみたところ、見事に「カリッカリホックホク」に揚げることができたのだ。さらに、仕上げにローズマリーを入れることで、油の匂いを飛ばし、爽やかな香りをつけることにも成功した。この方法だと、一番おいしく揚がるジャガイモは「男爵」という種類だとわかった。

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