「1日40万売る」フライドポテトベンチャーの正体

小学校教員→海外で飲食店勤務→北海道で起業

2年目には、小学校2年生の担任に就いた。子どもたちとは1年目からすぐに打ち解けていたから担任を持つのは嬉しいことだったが、成績をつけるのは苦手だった。特に図工、音楽、体育は悩んだ。本心では、まだ7、8歳ぐらいの子どもなのだから、図工も音楽も体育もただ楽しんで、好きになってくれればいいと思っていた。それなのに、成績という形で優劣をつけなくてはいけない。

では、優劣を見極められるほど自分の目は正しいのか? AからCの三段階評価で、Cをつけられたら、それまで絵を描くことが好きだった子も、才能がないと自分に見切りをつけてしまうかもしれない。自分にその資格があるのか? 

考え始めるときりがなかったが、担任が子どもの成績をつけないという選択肢はないし、自分ひとりで現在の制度を変えることもできない。濃霧のようなモヤモヤを抱えた齋藤は、当初の予定通り、日本から離れることにした。

ニュージーランドで知った飲食店のリアル

教員を続けながら青年海外協力隊の選考を突破した齋藤は、2017年3月いっぱいで教員を退職。赴任先は中東のヨルダンに決まった。しかし、ヨルダンの土を踏むことはなかった。

「ヨルダンは、当時まだ内戦が激しかったシリアと国境を接していたので、外務省の危険情報ではレッドゾーンになっていました。もちろん、協力隊なのである程度の安全は確保されているんですけど、親から『行かないでくれ』って言われたんです。親から進路についてなにか言われるのが初めてで、これは本気で心配されていると思ったから、さすがに断念しました」

残念な思いもあったが、気持ちを切り替え、「とりあえず英語を勉強しよう。どうせなら、日本人があまり選ばなそうなところに行こう」と2017年5月、26歳のときにニュージーランドへ。半年間、語学学校で学びながら、現地の日本食レストランで働き始めた。ここから、人生が大きく動き始める。

大学院卒で社会人経験もあり、パソコンを扱うスキルにも長けていた齋藤は、店で重宝されていたのだろう。ある日、別の会社に転職することになった料理長から、「お前も行くか?」と声をかけられた。その会社は、カラオケの鉄人の創業者、日野洋一氏の資産管理会社ファースト・パシフィック・キャピタルの子会社で、ニュージーランドで人気のラーメン屋と居酒屋を買収していた。齋藤は現地で就労できるワーキングホリデービザに切り替え、料理長とその2店舗の運営を任された。

このときに、外から見ていてはわからない飲食業の裏側を知った。例えば、行列のできる人気店だったラーメン屋は、単価が安すぎて想像以上に利益が少なく、忙しすぎて現場は疲弊していた。いつも繁盛していた居酒屋も、高額な家賃などの影響で、儲けはさほど多くなかった。

この2店舗の実情を把握した料理長と齋藤は、二の舞にならないような仕組みを考えて、新たにラーメン屋と高級レストランを立ち上げた。その頃には完全に会社の主力メンバーになっていたので、1年有効のワーホリビザの期限が迫った頃に「残ってほしい」と言われた。しかし、「自分でなにかやりたい」と思うようになっていた齋藤は断り、最後の1カ月はニュージーランドを巡ろうと、ヒッチハイクの旅に出た。

次ページたまたま入ったバーで受けた衝撃
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