Why don’t you come over? (うちに来れば?)
Why don’t we go to the movies tonight? (今夜、映画に行かない?)
Why don’t you like green peppers? (なんでピーマン好きじゃないの?)
Why don’t we eat raw chicken? (なぜ生の鶏肉は食べないのでしょうか)
「ホワイ?」それとも「ワイ?」
せっかくなので、例文を音読練習しようと、タロウさんにリピートするようにお願いするとwhyの発音が気になりました。筆者が「ワイ」と読んでも、タロウさんは「ホワイ」と言うのです。皆さんはwhyと言うときには、「ワイ」と発音しますか、それとも「ホワイ(ファイ)」と発音しますか。
実はこの発音、どちらも正解なのですが、現代ではネイティブの多くが「ワイ」と発音します。つまりwhyとYを同じように発音するということです。古い英語では、whyという単語はhwy(マクロンつきy)やhwīというスペルだったのですが、それを知ると「ホワイ」という発音も納得ですよね。どうしてスペルがhwからwhに変わってしまったのかはわかりませんが、この「フウォ/hw/」という音は、もともとは「フォ/ʍ/」という音だったそうです。この「フォ/ʍ/」はWの音「ウォ/w/(有声音)」が無声音になった音なんです。/w/と/ʍ/の関係は、Bの音「ブ/b/(有声音)」とPの音「プ/p/(無声音)」の関係と同じです。
有声音と無声音がよくわからないという方は、喉ぼとけに手を当てながら、bigとpigをそれぞれ発音してください。「ブ/b/」のときは声帯が震えていますが、「プ/p/」のときには震えていないですよね。同じ要領で「ウォ/w/」と「フォ/ʍ/」を比べてみてください。ちなみに「フウォ/hw/」と発音すると有声音になってしまいますので、声帯が震えなくなるまで、「フウォ/hw/」から「フォ/ʍ/」という音に近づけていってみてください。
英語ではWine-Whine Merger(WineとWhineの同化)と言いますが、有声音/w/と無声音/ʍ/が、どちらも有声音/w/として発音されるようになるという変化が起きたんです。つまり昔は、wineは「ワイン」、whineは「ホワ(ファ)イン」と言われていたのですが、現在はどちらも「ワイン」と発音されているということです。でも、一部のネイティブ、たとえばスコットランドとアイルランド、アメリカの南東部の人たちやニュージーランドの年配の方々は、いまでもふたつを区別して発音しているそうです。皆さんの近くにいるネイティブの方はどうですか。
タロウさんは中学生のときにwhは「フウォ/hw/」という音で習ったそうで、それ以来ずっと「ホワイ」と言っているとのこと。興味深そうに「『ホワイ、ワイ(why)』、『フエア、ウエア(where)』、『ホワット、ワット(what)』」と練習していました。すると、突然に「先生、whoはなんで『ウー/wu/』にならないんですか」と鋭い質問。
このWine-Whine Merger、おもしろいことに無声音/ʍ/のあとに、口を丸めて発音する母音/u/や/o/が続くときには、/w/にならずに/h/に変化したらしいのです。なのでwhoは「ウー/wu/」ではなく「フー/hu/」と発音するんです。ほかにも、wholeは「ウォウル/woʊl/」ではなく「ホウル/hoʊl/」になっていますよね。おなじwhのスペルなのに、whyとwhoで発音が異なるのは母音の違いのせいなんです。
「へえ」と言いながら、「フー、フ―、フー」と何度も繰り返しながら首を傾げるタロウさん。どうしたのか尋ねると、「『フー/hu/』の発音はできるけど、元々のwhの発音ができない」とのこと。なるほど、/ʍu/と言おうとしてたんですね。
筆者も/ʍu/を発音しようと試みたのですが、確かに言いづらい……。うまくカタカナで表現できないのですが「ヒゥー/ʍu/」って感じですかね? 皆さんは発音できますか。
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