実家から逃げられない「寺の跡取り娘」悲壮な告白 僧侶の父のモラハラ、結婚相手も制限され・・・

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「お寺の子」の人生とは――? (写真:瑞樹さん提供)

以前この連載で「牧師さんの娘」の話を紹介したことがあります。「周りの子と違う」境遇に居心地の悪さを抱いてきた彼女は、似た環境ながらも周囲とはなじんだ「お寺や神社の子」をうらやんでいたものですが、今度はその「お寺の子」から連絡をもらいました。

姉妹の長女として、婿をとり「寺を継ぐ」ことを期待されて育った瑞樹さん(仮名、30代)。いまは地元を離れているという彼女も、「教会の子」とはまた違ったしんどさを感じてきたようです。

落ち着いた口調で、的確な言葉を選んで話す様子に、なんとなく「お寺の人っぽさ」を感じた筆者も、ある種のステレオタイプにとらわれているのかもしれません。これまで見て、感じてきたことを、教えてもらいました(取材は2021年7月)。

父の実態を知られれば「檀家さんに見放される」

両親、そして同居する祖父母は、いずれの組み合わせも不仲でした。「四つ巴(よつどもえ)の状態」だったというので、かなり穏やかではありません。

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母親はおっとりとした性格で、父親にあまり逆らわないタイプでしたが、たまに「ちょっと違うんじゃない?」と意見などすると、父親はたちまち機嫌を損ねてしまいます。「家の空気がピリピリ」程度でおさまればいいのですが、「ドカーン」と爆発することもたびたび。母親に手を上げることもありました。

「機嫌がよければふつうにしゃべれるんですけれど、急に沸点が来ると、もう手がつけられなくなっちゃうんです。どこに怒らせるポイントがあるかわからないのも、面倒でした。まったく理解がないかというとそうでもなくて、『え、そこはいいんだ?』みたいなこともあって、基準が全然わからない。母からは(父のことを)『身体の大きな弟だと思いなさい』と言われるんですけれど、無理じゃないですか」

難しそうです。なぜ子どもが自分をだましてまで、親を受け入れねばならないのでしょうか。

何より耐えがたかったのは、家ではこれほど横暴な父親が、外では「人の道を説く僧侶」であることでした。酒を飲んでは「俺の稼いだ金で飯を食うな」と暴言を吐き、母親が用意してくれた食事を捨てたり、「女のくせに」と母親をこき下ろしたりしているその人が、「すべての人間は平等。お肉や野菜、食べ物はすべて何かの命をいただいている」などと教えを説き、一時は地元の保護司まで引き受けていたのです。

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