早く継がねば、という気持ちもあるようですが、聞くと先代の住職が亡くなってから交代するお寺もあるそうなので、瑞樹さんもそれでよいのでは。お寺を継ぐだけで、十二分ではないのかなと感じます。
「継ぐハラ」はもうやめて
瑞樹さんは「家を継ぐか継がないかは、本人の自由にさせてやってほしい」と話します。
「世襲制って本当に人の自由を奪うところがあって。お医者さんや弁護士も『親の跡をとって』みたいなのがありますが、とくにお寺や歌舞伎の世界など『伝統』や『歴史』をいわれるところの世襲って、本当に逃げ場がない。『自分が逃げたら途絶える』みたいなイメージがあって、継がないことへの罪悪感が半端ないんですよね。それを誰にもわかってもらえない、というしんどさもあって。
歌舞伎の跡取りの子なども、しんどいだろうなって思います。小さい頃から舞台に立ち、ほかの生き方をしたいと思ったときには、後戻りできないところまでいっていると思うので。どうかグレずにそのまま、やりたいことが歌舞伎でありますように、と願います。やりたいことがあったらどんどんやってほしい。でも、その選択を応援してくれない社会があるから、気の毒だなと……」
気をつけねばと思います。われわれ一般人は、本人の苦しみなど想像もせず「跡取り」ともてはやし、その人たちを追い詰めてしまっているのでしょう。
「お寺の業界では周知の事実なんですが、うつ病になる人がとても多いんです。うつが高じると、自死までいってしまうこともある。そもそもお寺のなかが家族として機能不全で、しかも、世襲だから逃げられないという絶望感がありますよね。お寺じゃなければ、また、長男長女でなければ『こんな家(寺)、いつか出てやる!!』という思いを支えに頑張ることもできますが、跡取りはそうはなりません。
やっぱり、世襲制ってそれだけしんどいんだろうなって思います。だからどうか、家を継ぐか継がないかは本人の自由にさせてほしい。社会も温かく見守ってくださいって、正直思います」
気軽に「継ぐんでしょ?」とか言っちゃダメなんですね。そう筆者が応じると、「『継ぐんでしょうハラスメント』ですね(苦笑)」と、瑞樹さん。新語「継ぐハラ」が生まれたところで、取材を終えたのでした。
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