不正を黙認せず「忌憚のない意見」を言うべき理由 相手に信頼されるプロ人材の「インテグリティ」
『INTEGRITY インテグリティ──正しく、美しい意思決定ができるリーダーの「自分軸」のつくり方』を上梓した岸田雅裕氏が、組織や経営を正すための「忌憚のない意見」を言える、受け入れられるプロフェッショナル人材の「インテグリティ」「信頼し合える共感力」について説く。
「疑問を呈することは許さない」という体質
東芝の長年にわたる、巨額に上る不適切会計問題の発覚とその後の迷走、三菱電機の検査不正、最近では、トヨタの直営店での不正車検の発覚、システム障害を何度も繰り返すみずほ銀行等々、企業の「不祥事」が後を絶ちません。
現場で働く人たちは「正しくないことをしている」とわかっていたと思いますが、経営幹部クラスは感覚が麻痺して、「正しくない」という認識すらなかったのではないか。
10年以上前、コンサルティングの仕事で、ある金融機関から、ある大手製造業企業の経営計画の精査を求められたときに、計画数値の異常を複数の事業で発見し、不自然さを指摘したことがあります。
たとえば、外部の業者に発注する経費が次の年から極端に下がっているとか、新しい施設の立ち上げで要員の運転習熟の期間が極端に短く見込まれているとか。
企画部門は「できる」の一点張り。不毛な時間を過ごし、われわれはこの会社の計画に青信号を出さないレポートを用意しました。案の定、後に「不正」の問題として露呈。その会社ではずっと以前までさかのぼって、自分たちに都合のよい数字、必要な数字から自分たちの結論を出して、それに疑問を呈することは許さないという体質、文化になっていたものと推察します。
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