不正を黙認せず「忌憚のない意見」を言うべき理由 相手に信頼されるプロ人材の「インテグリティ」

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こういう企業の体質、文化は、日本という国と似ていると思います。真のリーダーがいなくて、真空で意思決定されている組織が多く、政治家も、官僚組織も、企業も、これまでやってこられたから、これからもうまくやれると思って、後ろめたさもなくなっているのではないか。現場では、おかしいと思っている人はいるのだが、諦めている。

こうなった組織では、トップが自分も含めて過去を明確に否定しない限り、あるいは過去のしがらみがまったくないリーダーが外から入ってきて、明確に過去を断罪しないかぎり、日本人が得意なあいまいな解決で、誰も傷つけないというままに、全体が腐っていくのでしょう。

不祥事が起きた会社では、誰かが犯意をもって不正を指示したということは実は少ない。真空の意思決定があって、あるいはあったという虚構の下に、多くの人が間違った行為に参加しているということが多いと思います。

経営トップ、上司、部下それぞれが保身に走り、組織を正す「忌憚のない意見」を述べる人がいなかったということか、と思います。仮に「忌憚のない意見」を言う人がいても、経営トップ、上司や組織がそれを受け入れなかったということかもしれません。

「忌憚のない意見」を言えない部下、「忌憚のない意見」を受け入れられない上司、そして組織、それぞれにインテグリティ(高潔さ、誠実さ、真摯であること)が欠如しています。

「二度と来るな」と言われても気にしない

実際、「忌憚のない意見を言ってくれ」と言っておきながら、本当に正直なことを言うと怒る人が多い。

クライアントへの初回の進捗報告で、「会社の至るところからお金も人も出血しているので、まず止血すべき。未来を語ってごまかすときではない」と会社の現状の見立てを述べたら、「出ていけ、二度と来るな」と言われたこともあります。このときは、もう1人のパートナーが頑張ってくれたおかげで、ひと月後に私の会議への復帰がかないましたが。

もちろん相手を怒らせることが目的ではないけれど、それくらい本気でぶつからないと会社や経営が変わらないのも事実です。

「もう来なくていい、と言われたところでどうってことはないよ。日本に会社はいっぱいあるんだから」と若手には言っていました。

ちなみに、この会社は、プライベート・エクイティーがグリップを利かせて、経営者を交代させてから、みるみるうちに業績が回復しました。

こんなふうに、コンサルタントのような外部の人間ですら、忌憚のない意見を言ったら烈火のごとく怒る経営者がいるのですから、内部の人間が言ったら左遷されかねない。

「モノ言えば唇寒し」で、黙っておこうとなってしまうのも無理はないかもしれません。

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