沢井製薬トップが語る後発薬業界「不正」の教訓 小林化工、日医工の不正で露呈した業界のひずみ

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小林化工の不正について「ありえない内容で驚いた」と述べた澤井健造社長(撮影:ヒラオカスタジオ)
ジェネリック医薬品業界で、製造不正の余波が止まらない。2021年2月から3月にかけ、中堅メーカーの小林化工、そして最大手の一角である日医工までもが製造不正によって相次いで当局から業務停止命令を受けた。
ジェネリック医薬品は価格が安く、医療費を抑えたい国の使用促進策によって一気に市場を拡大させてきた。急成長で生じた製造上のひずみが一気に露わになった形だ。
業務再開後も、日医工からほかのメーカー品への切り替え需要が急増。メーカーの中には医療現場の需要に応じられず、出荷調整にいたるケースも出ている。
国内のジェネリックメーカーは194社(2019年11月時点)あり、そのほとんどが中小規模のメーカーだ。国は、ジェネリック薬業界での再編に本腰を入れて乗り出そうとしている。
そうした中、ジェネリック薬業界最大手の沢井製薬はどう動くのか。創業家出身の澤井健造社長に聞いた。

 

――小林化工に加えて業界大手の一角である日医工が品質問題を起こし、当局から業務停止命令を受けたことで、ジェネリック薬業界が注目を浴びています。

小林化工の問題が噴出したのが昨年12月のこと。それで業界全体が注目を浴びてしまったが、その前兆として2020年春以降、日医工による製品回収がかなりの件数で増えてきていた。

沢井製薬が直接問題を起こしたわけではないが、トップとして業界を引っ張ってきた会社でもある(日本ジェネリック製薬協会の会長は、沢井製薬の澤井光郎会長)。年明け以降、取引がある卸会社や調剤薬局にお詫び行脚をして回っていた。

――他社の問題であっても、業界に向けられる目線が厳しくなっているのでしょうか。

それはもう、めちゃくちゃ怒られましたからね。医師会や薬剤師会、それに厚生労働省や健康保険の支払い側など各方面から。

作れるだけ作れが生む「歪み」

――2社の製造不正の内容を聞いて、どう思いましたか?

日医工は買収を積極的に進めていて、取り扱っている品目数が増えていたので大変そうだなという感じはしていた。

ただ、小林化工で起こった内容(爪水虫薬への睡眠剤混入や試験データの改ざん)は、われわれからするとありえない内容でもあったのでびっくりした。

――今回の問題の教訓とは。

そもそも、法令を遵守している以上起こりえないことだ。ただ、経営層としては参考になった部分もあった。

ジェネリックの数量が急成長している中で、他社との共同開発品であれば自社が販売する分に加えて他社が販売する分も製造することになる。その際に、経営層として「少々のことには目をつぶって、作れるだけ作れ」というスタンスだとそういう歪みが生じてしまうんだろうなと。

小林化工の件がニュースになった翌日、社員向けに「何か起こりうる可能性があるところを徹底的に見直して、少しでも改善点があれば改善していく」というメッセージを出した。

すぐに各工場からは原薬の取り違えなどの問題がないかレポートが上がってきた。その中でも対応すべきところには迅速に対応した。社員としても気が引き締まった部分もあるだろう。

信頼回復のために、業界団体として「信頼性向上プロジェクト」を立ち上げており、各社が行っている自主点検の進捗を公開している。当社では、どこの会社と一緒にどこの工場で作っているのか、そこの査察はいつ行われたのか、といった製造関連の情報を公開している。

この記事の続きは無料の東洋経済ID登録でお読みいただけます。インタビューでは、ジェネリック市場の展望、業界再編に対する沢井製薬のスタンスなどについても、澤井社長が詳しく語っています。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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