タカアキさんがもう1つ腹立たしく思っているのは、対等とは言いがたいコンビニ本部との関係だ。
最近も本部から総菜類を減らして、代わりにサラダチキンやカット野菜の売り場を広げるよう提案された。タカアキさんは反対したものの、こうしたとき、加盟店側の希望が聞き入れられることはないという。ふたを開けてみれば、タカアキさんの懸念どおり売り上げは減少。「1日当たり2000円近く売り上げが減ったので、さすがに本部に抗議したのですが、『ほかのお店も同じです』という要領を得ない答えが返ってきただけでした」。
幼い子どもがいる親族が運営する店舗では一時、時短営業を試みたという。最近になってセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートの大手3社が、売り上げが少なく人手不足が深刻な深夜帯に休業する時短営業を認めるようになったからだ。
ところが、実際にやってみると本部からは時短営業の理由やメリットを執拗に尋ねられ、「それにより本部が受ける損賠は〇円です」と嫌味を言われた。揚げ句「このままでは次回の契約更新はできません」と通告された。結局時短営業は1年ほどでやめざるをえなかったという。
食い物にされるだけの関係は早晩限界がくる
タカアキさんはコンビニの仕事自体は楽しいという。「新築で引っ越してきたご家族のお子さんが大きくなってうちでアルバイトをしてくれたり、常連だったお客さんが高齢で亡くなったときに遺族がお供えするお菓子をうちで買ってくれたり。お客様に必要とされていると思うとやりがいを感じます」。
ただこのまま加盟店がコンビニ本部の食い物にされるだけの関係が続くなら、早晩限界がくる。次回の契約は更新するつもりだが、その次はわからないと、タカアキさんは言う。
最後に1つ、やはり書かなければならないことがある。
取材を終えてノートを閉じかけたとき、タカアキさんが「10年以上働いてくれている子を社保にも入れてあげられないのが心苦しい」と言ったのだ。法令違反の可能性がある。タカアキさんはどこのコンビニも同じ状態のはずだ、という。ただ私が取材する限り、社会保険に加入しているアルバイトもいる。すべての店が同じということはない。
一方で2017年には、労働基準監督署がチェックした都内のフランチャイズ店舗の95.5%で労働関連法令の違反が見つかるという衝撃的なデータが明らかになった。多くは労働時間に関する違反であった。いずれにしても、もはやコンビニは何かしらの違法行為でもしなければ立ち行かないという現実が浮き彫りとなった。
オーナーや店長は自身の過重労働を解決しようとすれば、時給を上げて人手を確保するか、今いるアルバイトを強制的にシフトに入れるしかない。また、オーナーや店長が自らの収入を確保しようとすれば、アルバイトの社保加入にかかる経費を“節約”するしかない。
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