コンビニオーナーが「奴隷契約」と憤る歪な実態 「本部」に声を上げたせいで解約された店もある

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難しい問題である。タカアキさんはコンビニ本部との関係を奴隷契約だというが、アルバイトにしてみたら、自分たちこそが奴隷だと言いたいだろう。ただ問題を「オーナーVSアルバイト」の構図で見ても、解決にはならない。肝心なのは、誰がそうせざるをえない状況に追い込んでいるのか、ということだ。

タカアキさんは「年収300万円といっても実際の手取りは200万円を切ります。これ以上、経費が膨らむと私たちが食べていけません。それに、コンビニ本部に声を上げたせいで解約されたお店もあります」と話す。

はたして本当に打つ手はないのだろうか。

全国に目をやれば、2009年にはセブン-イレブンの加盟店オーナーを中心とした「コンビニ加盟店ユニオン」が発足。その後は「ファミリーマート加盟店ユニオン」もできた。コンビニ各社が時短営業に踏み切らざるをえなかったのは、こうしたユニオンの長年にわたる訴えを無視できなくなったからでもある。

「脱24時間営業」で話題を呼んだセブンの元店主

時短営業といえば、2年前に大阪・東大阪市のセブン-イレブンの元店主が本社に先駆けて深夜休業を試みて「脱24時間営業」のきっかけをつくったものの、後に契約を打ち切られてしまう。タカアキさんは「この店主は客からの苦情も多かったのでしょう」と言うが、一方で昨年9月には地元大阪で元店主を「支援する会」も結成されている。

たしかにユニオンに加盟する一部のオーナーや店長にもなぜか「不正行為をしている」といった批判は付きまといがちだ。ただよほどの法令違反があれば別として、一連の社会的訴えの是非は別個のものとして考えるべきなのではないか。一部の報道やネット上のうわさを鵜呑みにしても、喜ぶのはコンビニ本部だけだ。

また、「最低賃金を1500円に」という目標を掲げてデモなどを行ってきた若者のグループ「エキタス」は、必ず中小企業への支援策の実現もセットで訴えている。中小企業経営者も一緒に声を上げようというメッセージだ。しかし、メンバーの1人は取材に対し「中小企業経営者の腰が重い」と嘆いていた。

タカアキさんが言うとおり、物申すことで契約を打ち切られるリスクはゼロではない。しかし上に書いたとおり、奴隷状態から脱したいなら、社会とコミットする回路はいくつもある。このままではオーナー同士が不毛な我慢比べを強いられるだけだ。

そして何よりもコンビニ本部である。私がこうした問題についてコンビニ各社に取材をすると大体「コメントは差し控えたい」といった答えが返ってくる。事実上の取材拒否である。ただもう潮時だろう。長年にわたる独り勝ち状態が招いた悲惨な現実にそろそろ目を向けるべきなのではないか。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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