一方で、実際に拒絶された経験はなくても、「声をかけるのは迷惑に違いない」「断られるのは嫌だ」と思い込み、声をかけられない人も多いように感じます。日本人の「極端なリスク回避志向」が、行動を思いとどまらせている側面はあるでしょう。
また、いまのご時世では、男性が女性や子どもに声をかける場合、過敏にならざるをえない事情もあります。つまり、「鈍感だから助けない」のではなく、「相手の気持ちをおもんぱかりすぎ、傷つくことを恐れる」という「繊細さ」ゆえに行動しないという結果になるようです。
四方八方に気を遣いすぎて「自ら生きづらく」している
事故などのリスクも低く、「ちょっとした声掛けでできる人助けでも消極的だ」というデータもあります。
大手旅行サイトExpediaの調査では、飛行機の中で、頭上の棚に荷物を入れるのを手伝う人の割合は、日本人は24%と世界最低でした。オーストラリアやドイツ、スイス、オーストリア、アメリカはほぼ半数の人が手伝うと回答していたのとは対照的です。
「誰もが余裕がない、世知辛い時代」ということもあるでしょうが、そもそも、日本人は他人とはあまり関わりたくない「他人恐怖症」なのではないかと考えさせられることがよくあります。
前述のExpediaの調査で、機内で知らない人に話しかける割合は、日本人はたった15%で、堂々のワースト1位でした。トップのインド(60%)、メキシコ(59%)、ブラジル(51%)、タイ(47%)、スペイン(46%)と比べてもその差は歴然です。
ちなみに日本以外の下位5カ国は、韓国(28%)、オーストリア(27%)、ドイツ(26%)、香港(24%)で、それでも日本とは、10ポイント近くの差がありました。
一方で、機内の迷惑行為に対して、何も言わずに黙っていると答えた人の割合は、日本人では39%と、世界一「我慢強い」一面も明らかになりました。
つまり、「助けたい」と思っても声に出せないし、「迷惑だな」と思っても声にできないわけです。言いたいことが何も言えない。四方八方、気を遣いすぎて生きづらい。
だからこそ、閉塞感やイライラが募るのかもしれません。コロナ禍で人との会話もままならない中で、こうした傾向はますます加速していくでしょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら