アメリカの物価上昇がこのまま続くはずがない訳

米中経済摩擦の影響は顕著には表れていない

消費者物価上昇率の高まりは世界的な動きなのだろうか?(写真:Funtap/PIXTA )
アメリカの消費者物価上昇率が高まっている。これは、昨年の落ち込みの反動と、経済の急激な回復によるものだ。大型財政政策の影響もあるかもしれない。
長期金利や原油価格の動向を見ると、今後インフレが亢進するとは考えにくい。
なお、米中経済摩擦などの構造的な要因の影響は、認められない。
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第45回。

インフレ率上昇の第一要因は、昨年の落ち込みの反動

アメリカの消費者物価上昇率が高まっている。

前年同月比の上昇率は、3月の2.6%から、4月には4.2%に上昇した。

この連載の一覧はこちら

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、最近の物価上昇は新型コロナ禍で経済が停滞した昨年の反動にすぎず、想定内であるとし、インフレは「一過性」と強調している。

この説明が正しいかどうかを検討しよう。

昨年3、4、5月に消費者物価が下落したことが、最近の高い物価上昇率をもたらした要因であることは、間違いない。

仮に3月から5月にかけての落ち込みがなく、傾向線に従って物価が上昇していたとすれば、昨年4月の消費者物価指数は、現実の値の256.2ではなく、260程度になっていたはずだ。

その場合には、2021年4月の対前年上昇率は、現実の値である4.2%ではなく、2.6%になっていたはずだ。

これは、例年の上昇率より若干高いだけだ。

このように、上記FRBの説明は、基本的に受け入れられるものだ。

なお、消費者物価は昨年5月にも下落しているので、今年5月の対前年比も高くなるだろう。

昨年の消費者物価は、5月がボトムで、それ以降は上昇に転じた。

したがって、水準がいま以上に大幅に上昇するのでなければ、対前年比は今後低下していくだろう。

次ページ急速すぎる経済回復も影響
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
  • 貧困に喘ぐ女性の現実
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • コロナ後を生き抜く
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃
日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃
面接や説明会で採用者が嫌う「9つのNG質問」
面接や説明会で採用者が嫌う「9つのNG質問」
海外マネー流入!外国人に買われた日本企業20社
海外マネー流入!外国人に買われた日本企業20社
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
生前贈与がダメになる<br>相続の新常識

相続をめぐる環境が激変しています。年110万円まで非課税だった生前贈与が税制改正により認められなくなる可能性も。本特集では相続の基本から、よくあるトラブルと解消法、最新路線価に基づく相続税額、さらに生前贈与の将来動向まで取り上げました。

東洋経済education×ICT