
「輸出管理法」「データ安全法」という中国の規制手段をどう考えるか(写真:ピクトマン/PIXTA)
中国が、アメリカの制裁措置への対抗手段として輸出管理法を制定した。日本企業は、これによってレアアース輸出が制限されることを危惧している。しかし、2010年代のレアアース輸出制限では、日本の対抗措置によって中国が自らの首を絞めた。この経験を思い返せば、中国は恣意的な運用はしないだろう。
また、中国はデータ安全法によって、データの持ち出しも規制しようとしている。
こうした状況で必要なのは、自由貿易主義の原点に立ち戻ることだ。
昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第46回。
中国輸出管理法がいまや日本企業の最大関心事
中国は、2020年12月に輸出管理法を施行した。
これは、米中貿易戦争で、アメリカの対中貿易制裁に対する中国の対抗手段だ。

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中国は、ファーウェイをターゲットとしたアメリカの制裁への報復の道具として使用する可能性を考えている。
対象はアメリカの企業であり、日本企業ではないだろう。
しかし、日本企業は、これが恣意的に運用されることを懸念している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が行った「2020年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(海外ビジネス調査)」によると、最も影響を受ける通商政策は、2019年には「追加関税措置」であったが、2020年には、「中国の輸出管理規制強化」が最も高い回答率(29.3%)で、「米国の輸出管理・投資規制強化」(25.9%)より高くなった。
とくに問題はレアアース(希土類)だ。
これは、ハイブリッドカーやEV(電気自動車)の永久磁石の材料として欠かせない。また、蛍光灯、LEDやレーザーなどの発光材料、MRI造影剤にも使われる。スマートフォンやPCなどの製造にも欠かせない。現代の産業に不可欠なものだ。
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