中国の新興EV(電気自動車)メーカーの雄として高く評価されてきた理想汽車(リ・オート)が、急速な業績悪化にあえいでいる。
同社が11月26日に開示した2025年7〜9月期の決算報告書によれば、同四半期の販売台数は9万3211台と前年同期比39%も減少。売上高は274億元(約6048億円)と同36.2%落ち込み、純損益は前年同期の28億元(約618億円)の黒字から6億2400万元(約138億円)の赤字に転落した。
理想汽車は15年に創業し、「造車新勢力」と呼ばれる中国の新興メーカー群の先頭を切って23年10~12月期に初の四半期黒字を達成。その後、中国自動車市場の過当競争がエスカレートする中でも、25年4~6月期まで11四半期連続で黒字経営を維持していた。
にもかかわらず、なぜここにきて約3年ぶりの赤字に陥ったのか。
リコールで200億円超の損失
その直接的な要因は、24年3月に発売したBEV(訳注:バッテリーだけを動力に使うEV)の高級ミニバン「MEGA」のリコール(自主回収)だ。
理想汽車は25年10月、上海市で起きた24年型MEGAの発火事故を受けて社内調査を開始。その結果、車載電池の過熱を防ぐ冷却液の防錆性能が不十分であり、最悪の場合には(冷却用のアルミ板が腐食して液漏れを起こし、電池が短絡して)熱暴走に至る恐れが判明した。
そこで同社は、24年型MEGAを対象にした合計1万1411台のリコールを10月31日に発表。問題の冷却液、車載電池、モーター制御装置の無償交換を実施しなければならなくなった。
理想汽車の李鉄CFO(最高財務責任者)は決算説明会で、上述のリコールの関連費用として7~9月期に約11億元(約243億円)の損失引当金を計上したと明らかにした。仮にこれがなければ、7~9月期の最終損益は黒字を維持できたはずだ。
しかし、理想汽車はリコールよりもさらに深刻な問題を抱えている。それは主力商品であるレンジエクステンダー型EV(訳注:航続距離を延長するための発電専用エンジンを搭載するEV)の販売失速に歯止めがかからないことである。




















無料会員登録はこちら
ログインはこちら