中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の自動車関連事業が急拡大を進めるなか、先行きに“複雑化”の不安が漂い始めている。
ファーウェイはEV(電気自動車)向けのeアクスル(駆動モジュール)やスマート・コックピット、先進運転支援システム(ADAS)などの開発を手がける一方、車両の自社製造には参入せず、提携先の自動車メーカーと共同で開発・生産する独自の事業戦略をとる。
同社は11月20日、「啓境(チージン)」と「奕境(イージン)」という2つの新たな協業ブランドを発表。前者の提携先は国有自動車大手の広州汽車集団、後者は同じく国有大手の東風汽車集団だ。
ファーウェイ系の協業ブランドは、民営中堅の賽力斯集団(セレス)と立ち上げた「問界(AITO)」を皮切りに、国有中堅の奇瑞汽車(チェリー)との「智界(LUXEED)」、国有大手の北京汽車集団との「享界(STELATO)」、国有中堅の江淮汽車集団との「尊界(MAEXTRO)」、国有大手の上海汽車集団との「尚界(シャンジエ)」が相次いで設立された。
2つの自動車関連部門が併存
これら「界」の字を持つ5ブランドに、今回発表された「境」の字を持つ2ブランドが加わり、協業ブランドは合計7つに増加した。
ファーウェイはなぜ、新たな2ブランドに「界」ではなく「境」の字を与えたのか。その裏には、同社の自動車関連事業をめぐる複雑な社内事情がある。
異業種から自動車関連事業に参入するにあたり、ファーウェイは自社ブランドの完成車を作らず、スマートカーの基幹部品やソフトウェアのメガ・サプライヤーになるという方針を掲げた。その実行を担う事業部門として2019年に設立されたのが「スマートカー・ソリューション・ビジネスユニット(スマートカーBU)」だ。
ところが、社内ではスマートフォンを主力とする消費者向け製品事業グループの端末部門も、スマートカーへの参入を独自に模索していた。2020年のアメリカ政府の制裁強化によりスマホ事業が大きな痛手を受けたため、新規事業の立ち上げで挽回を図るためだった。
こうして、ファーウェイ社内に2つの自動車関連部門が併存する状況が形成された。




















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