泥沼化の「米中摩擦」決して忘れてはならない原点 規制強化で解決せず、自由貿易の原則に立ち戻れ

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ただし、各国が輸出管理を行うのは、国際社会の安全性を脅かす国家やテロリストなどに、武器や軍事転用可能な製品が渡ることを防ぐためだ。そして、それを、国際的な枠組みの下で、抑制的に運用している。

日本も、大量破壊兵器や通常兵器の開発・製造等に関連する資機材などの輸出や、これらの関連技術の非居住者への提供について、外国為替および外国貿易法に基づき、必要最小限の管理を実施している。

これに対して、中国の輸出管理法は、上記のような目的だけでなく、自国の安全保障と利益を独自に守ることを目的としている。

こうした手段を乱用すれば、自由貿易の原則は著しく損なわれるだろう。

ただし、このような輸出管理を行うのも、中国が初めてというわけではない。トランプ前大統領が、「安全保障」を理由に、中国制裁のために輸出管理規則を運用したことが始まりだ。

そして、「安全保障」という理由が名目上のものになって、規律が失われつつある面がある。

例えば、トランプ政権は2020年12月に中国の半導体ファウンドリーSMICに対する制裁を発動したが、この措置をアメリカの安全保障の点から正当化できるかどうか、大いに疑問だ。

中国が成長したのも国を開いたから

だから、アメリカ側も、現在の政策を見直す必要がある。

国際的な経済取引では、何をしてもよいわけでない。

自由貿易の原則がある。

そのことによって、あらゆる国が利益を得る。

中国が成長したのも、国を開いたからだ。

この原点に戻ることが必要だ。

こうした議論には、「現実世界はそんなに簡単なものではない」という反論が返ってきそうだ。

しかし、米中摩擦でもっとも重要なのは、原点を忘れないことなのだ。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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