問題は、アメリカのインフレが、経済回復によって生じた一時的な現象なのか、それとも、持続的なトレンドの始まりなのかだ。
物価を高める構造的要因として考えられるのは、米中経済摩擦だ。
アメリカが中国からの輸入品に課した制裁関税は、アメリカの企業が利益減という形で負担したか、あるいはアメリカ国内での販売価格に転嫁されて消費者が負担したはずだ。
そこで、アメリカの消費者物価指数について、コロナ前の長期的な趨勢をみると、2014、15、16年あたりで伸び率は低下したが、おおむね一様に伸びている。つまり、米中間の関税引上げが開始された2018年以降に高まったということはない。
このように、米中摩擦の影響は、消費者物価には顕著には表れていない。制裁関税は、企業が負担した可能性が強い。
もちろん、今後、米中経済摩擦が激化し、その影響が消費者に及ぶことはありうる。
米中経済摩擦は、すでに世界的なサプライチェーンをかなり破壊している。半導体不足も、単なる需給逼迫でなく、アメリカの制裁措置による面がある。
構造的な要因としていま1つ考えられるのは、賃金の伸びが加速することだ。
こうした問題が顕在化するか否かを、注視する必要がある。
他国への影響は限定的
欧州でも物価が上昇しているが、4月の上昇率は、イギリスで1.6%、ドイツで2%、フランスで1.2%、イタリアで1.1%などと、アメリカより低い。
日本の消費者物価指数の対前年同月比は、12月にマイナス1%まで下がった後、伸び率が高まっているが、3月も4月も、まだ前年同月比0.1%の下落だ。
このように、消費者物価上昇率の高まりは、少なくとも先進国でいえば、基本的には、アメリカに限定された問題だ。
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