名目金利に影響するのは、現実のインフレ率というよりは期待インフレ率である。したがって、上述の金利推移は、2020年の夏ごろからすでに「経済回復→インフレ率上昇」という期待が形成されていたことを意味する。
その期待が、いま現実のものになっていると考えることができる。
また、2021年3月ごろ以降に長期金利に大きな変動がないことは、インフレ率が今後は現状程度の値で安定化していくという予想の反映と考えることができる。
つまり、今後のインフレ率は、コロナ以前の値に戻ると予測されていることになる。
「高い物価上昇率が続けば、金融政策が変更されるだろう」との論議がなされることがある。しかし、上でみたように、すでに長期金利はコロナ以前の水準に戻っている。これをさらに高めるような政策が取られるとは考えにくい。
長期金利の上昇は、これまで数回、株価の変動をもたらしてきた。
最初は、2021年の2月はじめと2月末頃だ。長期金利の上昇が顕著になったため、株価が下落した。
さらに、4月のインフレ率が発表された直後の5月13日に、株価が大きく崩れた。
しかし、このような調整は、すでに終わったと考えることができる。
原油が今後のインフレ要因になるとは考えにくい
原油価格(WTI)は、2019年には1バレル当たり60ドル程度で推移していた。
ところが、新型コロナの感染拡大により急落。2020年4月には16.5ドルにまで落ち込んだ。
その後は回復して、8月には42ドルを超えた。9、10月にはやや落ち込んだが、2021年3月には62.5ドルになった。4月は61.7ドルだ。
つまり、ほぼコロナ以前の状態に戻ったわけだ。大きな条件変化がなければ、今後はこの水準で安定していくと思われる。
2020年の3月から6月頃までは原油価格の水準が30ドル以下と低かったために、対前年比で見ると、2021年の3月から6月頃までは50%近い増加の値になる。
アメリカのガソリン価格の対前年比が4月に49%増になったのも、このためだ。
しかし、これは、現在の価格水準が高すぎることを意味するものではない。
中期的に見ると、2018年には、70〜80ドルであったので、現在の水準はむしろ低めとも言える。
今後も現在程度の水準が続けば、原油がインフレ要因になるとは考えにくい。
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