採用する側の視点に立ってみよう
ところで、転職を考える方の多くは、ご自身の立場に立ち、「どういう経験やスキルをアピールしようか?」と自分本位で考えがちですが、転職する側ではなく、採用する側が何を考えているかを考えたことはおありでしょうか?
そう言ったそばから余談で恐縮ですが、ご質問者様は、予算に制限がないと仮定した場合、定価300万円のもの(中古車などの、今後、数年は使用できうる耐久財をご想像ください)を購入する際に、下記の2つの選択肢があったら、どちらを選択されますでしょうか? ただし、購入するものに対する知識は、ご自身ではあまりない、という前提です。
A:5%引き。ただし、売り手による引き渡し時の品質検査や整備、今後の保証はない。
B:定価のまま。ただし、引き渡し前の品質検査や整備、今後数年の保証制度あり。
おそらく多くの方が、長期的に使用するものであり、完璧はないかもしれないものの、できるかぎりキチンとした現状と今後の安心を買う、という意味で、Bを選択されると思います。
なぜこんな例え話を出したかと言いますと、実はこれ、年収300万円の方を採用する立場の側の心理状況と同じなのです。上記でいう購入者が採用者で、対象物が転職者です。
採用する立場からすると、考えることはいろいろとありますが、主要なもののひとつには、「転職者は本当に使えるヒト(=採用する側のニーズを満たせるヒト)なのか?」というのが当然あります。そうは言っても、実際に採用して仕事ぶりを見ないことにはわからない、という不確実性が伴うケースが大半ですから、採用活動とはすなわち、「不確実性をできるかぎり排除するべく、あの手この手で頑張るプロセス」とも言えます。
そして、その不確実性を排除する要因をどこに見いだすか?というと、転職者の前職における「実績」なのです。他社において実績をきちんと出しているヒトは、ウチでも実績を出してくれる可能性が高いだろう、という理由です。
ちなみに、新卒採用で高学歴者が優遇される傾向として背景にある理由も同じです。新卒という職務経験のない人間を選ぶにあたって、「仕事を成し遂げてくれる可能性の高い人間」を選ぶがゆえに、学歴という、学生が唯一持っている過去の実績を、職業における「疑似実績」として見るからです。
そうしますと、逆に転職者として考えなくてはいけない本質は、学歴でも転職回数でもなく、「現在(前職)の会社でどういう実績を残したか」であり、その実績は「相手のニーズに対してアピールできる実績か」です。
そう考えると、転職を成功させる近道は、「現在の職場において、周りからも認められる実績を出す」ということです。現在の職場や上司はご質問者様の仕事ぶりをいちばんよくわかっている、というよりもむしろ、ご質問者様の仕事ぶりを直接、評価できる唯一の存在なのです。
いちばん近い存在に自分自身の価値や存在を認めさせることができないで、どうして遠い存在(転職先)にそれらを認めさせることができるでしょうか? 転職を考えるとなると、どうしても視線が転職先に向きがちですが、転職を考えるからこそ、注力すべきは実は現在の仕事なのです。
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