新型コロナと他ワクチン「同時接種」が必然なワケ 「予防接種控え」は社会の脅威となりかねない

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いずれにしても、伝わってくるのは日本のお役所のかたくなな“慎重さ”だ。人の健康に関わる問題なので慎重であるべきは当然だが、他国にただ追従するだけで自らの判断を避けているようにも見える。

先のとおり同時接種は、海外ではもう数十年も前から普通に行われてきたのに対し、日本ではこれまでほとんどなじみがなかった。海外赴任や留学の経験がなければ、大人で同時接種を受けたことがある人は少ないだろう。

もちろん、国内でも禁止はされていない。厚生労働省の定期接種実施要領では、同時接種は「医師が特に必要と認めた場合に行うことができる」としている。また、各ワクチンの添付文書にも、同様の但し書きが付記されている。

だが見てのとおり、お役所はあくまで現場に判断を委ね、同時接種を積極的に推進してはいない。日本のお役所が「副反応」という言葉にめっぽう弱いことと、無関係ではないだろう。30年前、予防接種の副反応(有害事象)をめぐって集団訴訟が多発し、国側が敗訴あるいは和解となった。以来、完全に腰が引けたままなのだ。

それでも現場は変わりつつある。小児科では、乳幼児の接種スケジュールの過密さから、同時接種が少しずつ一般的になってきた。2011年に日本小児科学会が「同時接種をより一般的な医療行為として行っていく必要がある」と表明したことが、後押ししているのだろう。

ナビタスクリニックでは成人に対しても、同時接種を積極的に行っている。科学的に安全かつ有効で、なおかつ必要性があるならば、接種を受ける側にとってもメリットが大きく上回るからだ。

新型コロナワクチンでも、基本的には同じ考えでよいだろう。むしろ今、同時接種を国民が広く受け入れるチャンスかもしれないと思っている。

同時接種を行うべき「3つの理由」

新型コロナワクチンについては、医療現場の実感として、また、活発な経済社会活動を取り戻すためにも、同時接種を行うべきと考える。理由は3つある。

1つ目の理由は、接種現場の混乱や接種タイミングの逸失を避けるためだ。

現在、ナビタスクリニックの医師陣は、新型コロナワクチンの接種に積極的に協力している。だが、秋になればインフルエンザの予防接種にも追われるだろう。

昨冬は幸い、インフルエンザの患者数は激減した。ミクスオンラインによると、医療情報総合研究所が処方データを分析したところ、今年1月のインフル患者数は、直近5年間(2016~2020年)の1月平均の1000分の1にとどまったという。

人流が大規模にストップし、1人ひとりが手洗いや消毒、マスク着用を徹底し、密を避けた効果とみて間違いない。

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