新型コロナと他ワクチン「同時接種」が必然なワケ 「予防接種控え」は社会の脅威となりかねない

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実際、国が主導している風疹ワクチンの追加的接種(公的接種のなかった1962~78年度生まれの男性対象)も低調だ。厚労省によれば、2019年4~11月に接種クーポンを受け取った対象者の接種率は、わずか16.1%だった。40~50代の男性が仕事や休息と天秤にかけた結果である。

それらの感染症はインフルエンザ同様、今は影を潜めているかもしれない。しかし人々の活動再開とともに、しかも「接種控え」の反動として、ポストコロナ社会の脅威になるだろう。同時接種をワクチン接種機会の確保、接種率上昇につなげることが、経済社会活動の安定をもたらすはずだ。

同時接種をやらない手はない

新型コロナワクチンの同時接種を支持する3つ目の理由は、そもそもの大前提として、他のワクチンの知見や経験から科学的な有効性・安全性を類推できるからだ。

アメリカでは、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種のレビュー研究が、40年も前にシカゴ大学によって行われている。その結果、2つのワクチンを同じ時に別々の部位に注射した場合、どちらのワクチンに対する抗体反応も損なわれないと結論づけられている。抗体は少なくとも4年間、免疫は少なくとも5年間続くと予想され、一方で副反応は、局所的な赤みや腫れ、一部の人に軽度の発熱が見られる程度だった(National Library of Medicine)。

規模はぐっと小さいが、日本でも2018年、同じく肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種について高齢者を対象とした研究が行われている。65歳以上の男女162人を、同時接種グループと、2週間あけて順次接種するグループの2つに分けて調べた結果、同時接種でも副作用を増加させることなく、順次接種に匹敵する免疫原性が示されたという(National Library of Medicine)。

ナビタスクリニックでもさまざまなワクチンの同時接種を行ってきたが、これまで重篤な副反応等の報告はない。むしろ受診の回数が減らせるので、一度でも同時接種を経験して安全性と便利さを知った人は、別の機会にも同時接種を希望されることが多い。デメリットがほぼなくメリットを実感しているのだから、躊躇する理由がないのだ。

そう考えると、やはりCDCの方針転換は妥当だろう。新型コロナワクチンそのものも、英国から接種が始まってもうすぐ半年になるが、予想された以上の深刻な副作用の報告はなさそうだ。

CDCの方針転換を受けて今後、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論がどう変わっていくか。インフルエンザの予防接種が始まる秋までに、何らかの動きはあるだろうか。一度は肩透かしを食らったが、改めて期待を込めてフォローしていきたい。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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