あなたはどのタイプ?「働く人としての価値」4種 キャリア構築に役立つ「マーケティングの英知」
井上:例えば、成熟しきってコモディティ化が進んだ(機能の差がほとんどなくなった)カテゴリーで、お客様は情緒的な価値を求めているのに、機能的な価値で勝負をしようとすると、ボタンの掛け違いが発生します。その後どれだけいい商品をつくっても、どれだけいい広告をしても、ボタンの掛け違いは直せません。ですので、まずは最初に提供する価値を決める必要があるのです。そのためには、まずはそのコンセプト開発の時点で、お客さんの声をしっかりと聞くことが大事です。
田中:とはいえ、話を聞くととても難しそうです。価値の定義を間違ってしまったら、その後に挽回することは絶対にできないのでしょうか?
井上:いくつかある価値の中で、広告において特定のものにフォーカスすることで、アピールする価値を調整することはできると思います。
例えば、アメリカで一番売れてるビールは何だかご存知ですか? 最近では日本同様クラフトビールがブームですが、依然「バドライト」「クアーズライト」「ミラーライト」などライト系のビールがシェアの上位を占めています。
ライト系のビールは、カロリーが少ないから「太りにくい」「(比較的)健康的」という効能もありますが、同時に「膨満感を感じにくい」「たくさん飲めて楽しめる」という側面も持ち合わせています。各社は後者にフォーカスした広告展開でライトビールの市場を拡大してきましたが、当初の開発コンセプトは「ダイエット志向の人に向けたビール」だった可能性もあります。
このように、広告によって後から訴求する価値を調整することはできますが、そもそもその価値を持ち合わせていなかったらそれは叶いません。広告はあくまで価値を「伝える」手段であって、「つくる」手段ではないということは改めて強調させてください。また、「つくる」も「つたえる」もあくまで相手が起点、というのが何よりマーケティングの特徴だと考えます。
普遍的なスキルで「変幻自在」のキャリアを目指す
田中:なるほど、面白いお話ですね。私は、自らの意思で縦横無尽に変身し、未来を切り拓いていく「プロティアン」というキャリア論を提唱しています。相手を理解し、自分のよさを活かしてその求めるところに応える、というマーケティングのスキルは普遍性が高いので、マーケターとプロティアンは相性がいいかもしれません。
井上:そうですね。先生の著書にある「プロティアン診断」ですが、私は12点を獲得して無事合格でした(笑)。実際、私はこれまで転職するたびに業界を変えています。そうして変幻自在に仕事を変えられるのも、おっしゃるとおりマーケティングのスキルが普遍的だからだと思います。さらには、この「相手を理解する」という技術は、個人での情報発信やキャリアプランにも活用できます。プロティアンを目指す人にはとても役立つスキルなのではないでしょうか。
田中:今回はじめて直接お話をお伺いさせていただきましたが、これからも一緒にいろいろとやらせていただけると、面白いことが起きる気がすごくします。今後ともぜひよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。
井上:こちらこそ、よろしくお願いします。ありがとうございました。
(構成:小関 敦之)
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